第13章 幸せすぎる無理難題と悲しすぎる別れの口火
杏寿郎さんの相変わらずな物言いに恥ずかしさを堪えるように口を閉ざしていた私だが
「…っもう!二人ともいい加減にしてください!ここはまだお館様のお庭ですよ?そんなしょうもない話をするのなら、ここを出てからにしましょう」
段々と声量が増していく2人を落ち着かせようと、杏寿郎さんの隊服の端をグイグイと引っ張りながらそう声を掛けた。
すると
「……それもそうだ!腹も減ったことだし、牛鍋でも食べに行くとしよう!」
杏寿郎さんは途端に落ち着きを取り戻し
「…そうだな。ついでに買い出しもしてぇし。俺の行きつけの店でもいいか?」
「うむ!宇髄の行きつけか!それは楽しみだ」
天元さんも先程までの様子が嘘のように普通にしゃべりだした。そんな2人の切り替えの早さに
……流石柱…
と思わず感心してしまう私なのであった。
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その後再び杏寿郎さんに横抱きにされるという羞恥に耐えた私は、天元さん行きつけの店で牛鍋を食した。天元さんの行きつけと言うだけあり、今まで食べてきた牛鍋の中で最も美味しいものだったし、何よりも牛鍋のフツフツと煮える音が何ともいい音だった(杏寿郎さんは美味い美味いと言いながら10回お代わりを注文していた)。
食事を食べ終えた杏寿郎さんと天元さんは、お館様の今日のご様子や今後の隊がどうなって行くのか等真剣な面持ちで話し始めた。私は2人の会話の邪魔にならないよう
”気になるお店があったので先に出ますね”
と一声かけさりげなく自分が食べた分のお金を置き先に店を出ることにした。