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音の溢れる世界でいつか【煉獄さん】【鬼滅の刃】

第6章 生きてこの先の刻を共に


スッと自分の足に括りつけてあるクナイさわりながら空へと視線を向けた。まだ空は暗く、陽光が差す気配はない。それでも先ほど応急処置をしている時、たまたま目にした時計は、陽の出る時間までそう遠いわけではないことを示していた。


…頸を切る必要はない。今回は、乗客と…炎柱様の命を守れれば…それでいい。あの人はきっと、自分の命を削ってでもあの鬼と戦うはず。…そんなこと、私がさせない。炎柱様には、炎柱様が無事に戻ってくるのを心待ちにしている家族が…千寿郎君がいる。ひとりぼっちになんて私がさせない。必ず…千寿郎君の元に炎柱様を帰してあげるんだ。


そう決意を込め、差し込んでいたクナイを、ズボンの裂け目から取り出し、


「炭治郎君、これ預かっててくれる?」

「え?」

逆の手でベルトに差し込んでいた日輪刀を抜き、炭治郎君に差し出した。そんな私の行動に、炭治郎君は不思議そうな顔で私の顔を見てくる。


「身体をね、少しでも軽くしたいの」


そう話している間も、炎柱様と上弦ノ参の戦いはより激しさを増していく。


私は右手に持っていたクナイで


ビリビリッ


「えぇぇぇぇえ!?」


音を立て、隊服のズボンと袖を切り裂き短くしていく。そんな私の行動に、炭治郎君は目が飛び出してきそうなほど大きく見開きながら驚いている。


「…お前……頭おかしくなったのか?」


伊之助君も、猪頭を被っているから良くわからないものの、恐らく物凄い顔でこちらを見ているのではないかと思われる。


「言ったでしょう?軽くしたいの」


クナイをもう一本手に持ち、軽くピョンピョンと跳ねてみると、やはり先程よりもかなり身体が軽く感じられるような気がした。



ふぅぅぅ。



目を瞑りながらゆっくりと息を吐き、吐き終えると同時に激しくぶつかり合う炎柱様と上弦ノ参をじっと睨むように見る。そして限界まで耳を澄ませ、二人の身体から発せられる音に耳を澄ませた。


…すべての動作を目で見切れなくても、音を聴けば次の動作を予測できるはず。


クナイを両手に持ち、原型を半分程しか留めていない隊服を纏ったこの姿は、もはや"鬼殺隊士"というよりも"忍"と言う方が相応しいだろう(事実天元さんの元でやっていたのは8割程が忍の修行だったのであながち間違いではない)。


…やる。何がなんでも…やるんだから!


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