第27章 今宵はふたりで【過去作派生中編 🤍→主←🐾 ♟️】
ドンッとシロの膝辺りにぶつかったその少女は、尻もちを着いてしまう。
「痛ッ……! ちょっと、私を誰だと思っているの……!」
眼をつり上げて居丈高に告げるその娘は、まだ子供だった。
「ねぇ、聞いているの……!?
早く謝罪しないと、お父様に言いつけてやるんだから!」
虚勢を張るような稚い言動を、シロは冷ややかな眼で見下ろす。
その眼差しに怯えたように肩を震わせるさまに構わず唇をひらいた。
「前方を見ていなかったのは貴殿であろう。
生憎と我は———、」
ハッとしてシロはダンスホールを見渡す。
先刻までルーヴと踊っていたヴァリスの姿が何処にもないことに気づいた。
(あやつは……!)
ギリッと唇を噛みしめ、即座にダンスホールを出ようとすると、慌てた様子の使用人たちに全力で止められた。
「シロ殿……! 勝手に出ていかれると困ります!」
「……ヴァリスは何処だ」
血も凍てつく程冷めた声音だった。
それに彼らが怯む。シロはさらに声を重ねた。
「貴殿らの主人の目的が何か、我に想像がつかぬとでも?」
「で、でも……ルーヴ様が………ひっ!」
その鼻先に剣を向けると、使用人たちは悲鳴を上げる。
怯えた眼をする彼らに、シロは再度唇をひらいた。
「もう一度だけ問う。ヴァリスは———我が主は何処だ」
冷めた声、冷めた瞳。
サッと剣をひと振りし、扉を守るように立ち塞がる彼らを払う。
彼らの制止を振り切って、廊下へ飛び出した。