第38章 息が止まるその時に(謙信様:誕生祝SS2025)
佐助「ノープロブレムだ。舞さん。
謙信様と舞さんの仲が良いと俺も嬉しい。
さ、とっておきの非常食だ、どうぞ」
「わ、レトルトのおかゆ?これって現代から持ってきたの?」
手渡されたのはアルミパウチに入った梅がゆだった。袋ごとお湯で温めて口を切ればそのまま食べられるやつだ。
湯気を立てる白いおかゆの中に潰れた梅を見たら唾液がジュワと出てきた。
佐助「ワームホールに吸い込まれた後、どこに行き着くかわからなかったから食料を持ってきたんだ。
幸い出番がなかったけど、そろそろ賞味期限が近づいてるし、珍しいものだから謙信様の誕生日に食べるのもいいかと持ってきたんだ。
まさか遭難して本当に非常食として役にたつと思わなかったよ」
「そっかあ。こんな寒い中で温かいご飯にありつけるなんて嬉しいよ。
ありがとう、佐助君!」
佐助「まだたくさんあるからいっぱい食べて。
塩がゆと卵がゆもあるし、がっつり食べたいならカレーもあるし」
「カレーもあるの!?それは宿に行ったらご飯を貰って食べたいな」
佐助君の荷物から携帯おにぎり、牛丼、親子丼、中華丼、お味噌汁などが出てきて、どれも『長期保存5年!』と書かれていた。
ワームホールに飛び込むとわかっていたらこういう準備をしていてもおかしくないけど、それを持って歩いている時に遭難する確率ってかなり低いと思う。私達は運が良かった。
佐助「謙信様にはカップめんデビューしてもらいます。
一応きつねうどんです。もう3分たったので食べていいですよ」
謙信「かっぷ…めん?3分?」
謙信様の前に置かれたカップから、昔よく食べていた良い匂いがする。
出汁と調味料、そして少し油っぽい匂いが鼻孔をくすぐった。
「カップというのは器の呼び方で、その容器に入っている麺だからカップめんです。
味が濃く感じるかもしれませんが美味しいですよ」