第34章 呪いの器(三成君)
三成「呪詛を疑って調べていたのですが、この本に気になることが書かれていました。
読み上げます。
『五拾の畜生を殺め、屍から抜いた血に呪いの器を三日三晩浸す。
血染めの器を肌身離さず持ち続け、十二の月が過ぎると器は完成するだろう。
呪いの器は恨みが深いほど人を魅了する美しい姿となり、身につけた者はやがて苦しみの果てに命を落とす』」
呪いの器をつくるための悍(おぞ)ましい内容を、三成君の爽やかな声が読み上げたせいで残酷さが増した。
ゾッとしている私の前で三成君は静かに本を閉じた。
三成「これは肥前(長崎県)の方から入ってきた書物です。あちらは真珠の産地であることから呪いの器としてよく真珠が使われたそうで、『呪詛が完成した真珠は美しい紫色をしている』そうです」
「っ、嘘だよっ!千代姫はそんなことしないっ!
猫さんをあんなに可愛がってくれたじゃない!そんな…50匹も動物の命を奪うなんてしないよっ!」
ネズミが出て飛び上がった時も『ネズミとて小さな命があるのです。殺さず遠くに放ってやりなさい』と言った人が、呪いのためにそんなことをするわけがない。
信長「貴様、そう何度も取り乱すな」
低い声色で叱責され、一気に怒りを鎮静させられた私は押し黙った。3人とも冷静そのもので騒ぎ立てているのは自分だけだ。
信長「三成、この簪が呪いの器かどうか調べる方法はあるのか」
千代姫は私を呪ったりしない、冷静に考えてみなくてはと心落ち着けていると三成君が懐から短刀を取り出した。