第29章 五条家当主
「とてもお綺麗ですよ」
鏡に映る自分の姿を見て思わず顔がほころぶ。
初めて着た浴衣姿の自分に嬉しくなった。
「ありがとうございます!」
「いえいえ、では私はこれで。お話が出来て嬉しかったです」
扉の前で頭を下げた三田さんに私も「ありがとうございました」とお辞儀をすると、そっと襖は閉じられた。
それから30分ほどしたころ、ボーと中庭を眺めていると再び襖が開き
「リンちゃんお待たせー!」
という悟の元気な声が聞こえてきて、そちらへと振り返った。
振り返った先の悟は、何故か襖の前で立ち止まったままで、ポカーンと口を開け私を見下ろしていて。
「どうしたの?」
首を傾げながら様子のおかしい悟へ近づくと、悟はハッとしたような表情をした後
「え!可愛いすぎる!え?天使!?天使なの!?」
「あははっ、さすがに天使は言い過ぎでしょ」
褒められたのは嬉しいけど、天使は流石に言いすぎと思いながらクスクスと笑っていると、悟はスマホを取り出し私へと構える。
「ちょっと待って本当に可愛い!めちゃくちゃ似合ってる!写真撮らして!絶対待ち受けにするから!!なんなら僕とツーショットも撮らせて!!」
パシャパシャという機械音があり得ない回数聞こえてきたかと思うと、今度は私の身体を引き寄せインカメで顔をくっつけるようにして写真を撮り始めた。