第26章 恋人紹介
「えーと、じゃあまずは刀の扱いについてだよね」
グラウンドで座り込む一年生4人が私を真剣な眼差しで見上げる。
私は背中に背負っている袋の中から自分の刀を取り出すと、それを静かに鞘から引き抜いた。
キラリと光る銀の刀は、今でも綺麗に保たれている。
「これは私の刀、“乱華(ランカ)”だよ、もうかれこれ10年は使ってるかな」
そんな私の言葉に憂太君が興味津々に見つめているのが分かる。
「刀はね、何よりも感覚が大事になってくる。まぁそれはスポーツとかと同じだと思うんだけど、とにかく刀の全てを感覚として自分の中に閉じ込めるの」
スポーツだと例えば野球の場合で言うなら…ボールを握った感覚、ボールを投げた時の腕の振り下ろし方、バットを振るった時の重さ、グローブでボールを収めた時の形。
刀もそれと同じだ。
「柄を握った時の太さ、鞘から抜いた時の重さ、刀を振り下ろした時の風、弾き返した時の軋み…そんなふうに刀の全部を肌で感じて自分の全身で感覚として記憶していくの」
私は持っていた乱華をビュンッと一太刀振るう。
「でもまぁそんな簡単に感覚なんて掴めるものじゃない、だから憂太君には今日から24時間その刀と一緒に生活してもらうよ」
「24時間…ですか?」
憂太君は唖然としたように私を見上げる。
「うん!24時間!移動の際はもちろんのこと、ご飯の時も授業中もまぁお風呂はさすがに無理だけど、寝る時もね!とにかくずーーっと持ってて!出来ればなるべく柄を握ってて欲しい。どんな角度でも良いから」
「寝る時もですか!?」
驚いたような声を出す憂太君に続いてパンダ君が「まるで恋人だな憂太」とニヤニヤ笑う。それに対し棘君も「しゃけしゃけ」と弾んだ声を出した。
「そうそう!まるで恋人だと思って!寝る時はうっかり鞘が抜けないように気を付けてね!私は鞘抜けてて布団切れてた事あるから」
あははっと笑って見せる私に「リンさんって結構体育会系なんですね」と言って真希ちゃんがニィっと笑う。
「見かけによらず、頭より身体が動くタイプだとは昔言われたかも」
そう、確かそう言っていたのは傑だったと思う。