The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
ボソッと何故か三ツ谷先輩がそう言うので、どういう意味なのだろうかと思い少しだけ眉が寄る。
別に普通に笑ったつもりだが。
「いや、和泉って結構壁作ってくるから」
「壁…」
まぁ一線は引く。
本当に信用しても、傍にいても俺に危害が無いかどうかを探る為にも。
だから三ツ谷先輩に対しても一線を引いていた。
でも、一線を引かなくても少しだけ信用しても大丈夫な人間なのかもしれない。
「簡単に人を信用するのもアレですからねー」
「警戒心強いんだな。猫みてぇ」
「猫じゃないですねー」
猫って俺に言うのあの人達以外にもいるのかよ。
そう思いながら、三ツ谷先輩と共に家の外に出れば暗くなっていた。
そして風が吹くのだが生ぬるく頬を撫でていく。
「和泉。メットつけてろ」
「え、あ、…ありがとうございます」
メット渡されたの久しぶりなのだが?
思わず驚いてしまったのは、修二も青宗も最初はメット渡していたが今はもう渡すことなんてない。
久しぶりにつけるメットだが、頭に被っていれば三ツ谷先輩がエンジンをかけていた。
三ツ谷先輩の愛機・インパルスに。
「三ツ谷先輩はメット付けないんですか?」
「ん?オレは別につけなくても良いけど、和泉に怪我させんのは駄目だろ?もしの時だけど……まぁ運転を失敗する事はねぇけどな」
女の扱いじゃんそれ。
さりげなくなんで女の扱いするんだこの人…と思いながらメットのゴムを握った。
「んじゃ、行くか」
「後ろ、失礼します」
タンデムに乗り、修二の時のように右手を後ろにして掴んでいれば三ツ谷先輩が後ろを振り向いた。
そして何故か俺の両腕を取ると自分の腰に回させる。
すると腕を引っ張られた衝撃で三ツ谷先輩の背中にぶつかったのだが筋肉があるからなのか硬い。
そして以外にも腰が細い気がした。
「危ねぇから、掴まってて」
「え…」
「もし何かあって和泉に怪我させたら、鳴海さんに申し訳ねぇからな。あとマイキーが五月蝿そうだし、オレも怪我させたくねぇから」
女扱いは何となく苦手。
それはきっと幼い頃から男として育てられたせいなのだろうけど、女は無力だと言われるから苦手だ。
だけど三ツ谷先輩の俺への扱いは…。
苦手ではないし、悪意もなくて下心も無い気がして嫌な気分にはならない。