The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
千冬もまた、青宗に殴り飛ばされて倒れる。
「松野千冬。テメェとはピンピンしてる時にやってみたかった」
「くっそっ」
「うぐ……」
「ゲホゲホ!!」
3人ともその場に倒れ込んでしまい、ボロボロでは無い状態なのは八戒と和泉だけとなってしまった。
(隆さん……武道……千冬……)
大切な恋人が倒れる、大切な幼馴染が倒れ、大切な仲間が倒れた。
「残るのは神澤と八戒だけか。おい、神澤。一つ良い条件を出してやろうか?」
「条件……」
「黒龍に来るって言うなら、コイツら見逃してやってもいいぜぇ?」
ピクリと和泉の身体が跳ねる。
そして武道達は大きく目を見開き、彼女の方へと視線を向けた。
「大事な恋人、大切な幼馴染、大切な仲間。助けてぇよなぁ?ならこちら側に来い。簡単だろう?オマエは大切な存在を見殺しにするような奴じゃねぇだろ?」
大寿は和泉へと手を差し伸ばす。
「和泉……駄目だ……和泉……」
最悪な方向へと向かっていると武道は冷や汗を流す。
もし、このまま負けたら……もしこのまま和泉が黒龍へと行ってしまえばどうなるか。
ゆらりと和泉は身体を動かす。
ゆったりとした足取りで大寿へと近付いていくその背中を、九井は笑みを浮かべる、青宗は無表情で見守る。
「和泉……!」
大寿の目の前に和泉が立つ。
俯いている為、表情は見えないが彼女の手はゆっくりと大寿の手へと伸びている。
(これで神澤の財力は黒龍のもの……!)
大寿は歓喜を感じた。
ずっと手に入れようとしていた物が手に入ると、近づく彼女の手に笑みを浮かべる。
だが和泉が握ったのは大寿の手ではなかった。
彼の手首であり、勢いよく大寿は引っ張られる。
「な……」
「死ねよ、オマエ」
和泉の真っ黒に淀んだ瞳が見えた瞬間、大寿の顎に和泉の足がめり込んでいた。
「がっ……!」
「和泉!?」
「誰が黒龍なんぞに行くか。私は、東卍だ」
蹴り上げられた大寿は顎を抑えると、額に青筋を浮かべた。
「神澤ーー!!」
大寿は拳を振り上げ、和泉を殴り飛ばそうとした。
その時だった。