第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
なんとか無事におばあさんの家に辿り着いた。ものすごく慎重にゆっくりと確実な安全運転で…。僅かな時間だったとはいえぐったりと疲れていた。
「いつもなら5分の道が15分もかかったな」
「だったら光太郎さんが運転すればよかったじゃない」
「けどさぁ、余計な事考えなくてよかっただろ?人間さ、今以上のピンチがくると抱えてた問題なんてどうでもよくなんのよ」
「それは確かにそうだけど。でもおかげで頭真っ白になっちゃった」
「いいんだよ、それで」
「もしかして私の為に運転させてくれたの?」
「そう。俺だって結構ヒヤヒヤしてたけどこういうのもありかなって」
「ヒヤヒヤしてたなら代わってくれたいいのに」
「それじゃ意味ねぇもん」
「私の運転そんなに酷かったの?」
「合格点はやれねぇかな…。でもちょっとスッキリしたろ?」
「うん…。スッキリというかちゃんと着いてよかったって安心感だけど」
「それでいいじゃん。せっかく頭真っ白になったんだから残りの島生活の楽しい思い出で塗りつぶしとけば?」
「ポジティブにも程があるよ」
「いいだろう?こっちの生活してたら嫌でもポジティブになるから!」
光太郎さんの笑顔につられるように私の口角も上がる。
光太郎さんの言葉はいつだって心に温かい感情をもらたしていく。お陰で光太郎さんの笑った笑顔は真っ白になった頭の一ページにしっかりと刻み込まれた。