第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「こんなちっちゃい体でいろんなこと背負いすぎな?」
「そんな事言われると泣きたくなるんだけど…」
「泣けば?ここで居る間くらいはその荷物全部降ろしてさ…」
「そう言われると泣けないよ」
「じゃあいいじゃん。そのまま笑っててよ」
「うん…」
「泣きたいときは泣いていいから」
「光太郎さんってあったかいね。不思議と落ち着く」
「…けど、いきなりこんなことしてごめんな。なんか放っておけなくてさ」
「ううん。…ありがと。気にかけてくれるだけで嬉しい」
「ま、あかーしに見つかったら殴られそうだけどよく考えたら一緒に寝た仲だしいいよな、これくらい」
「それは忘れて…」
「え、無理。久々の女の子の感触だったし。いちかちゃんがご希望なら今日も添い寝してやろうか?」
「いらない。その言い方だと下心ありそうだもん。いくら別れたばっかりだからってそこまで緩くないもん」
「そういう意味じゃないって。そりゃ下心が全くないと言えば嘘になるけど」
「光太郎さんって嘘つけないんだ」
「そう、俺って素直だから…。今もいちかちゃんがキスして欲しいとか言わねぇかなぁって思ってる」
「なにそれ。そんなこと言わないからね」
「酔った時は可愛かったのになぁ」
「忘れて、今すぐ忘れて」
「それは無理」
ぎゅうって抱きしめられながら、子供みたいな光太郎さんに思わず吹き出して笑ってしまった。
友達でも恋人でもないのに、なんだろう、この感じ…。一緒にいて落ち着くのに時々ドキドキして抑えられなくなる。物心ついた時から私は鉄朗しか知らなかったけど、こんな風に別の誰かが心にいるのがとても不思議だった。
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