第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
≫夢主side
あれ以来先生にも会えなくて私たちを繋ぐ手段はメールのやりとりだけだった。及川先生は何も伝えていないようで私たちの関係が特に変わることもなかった。
先生との関係だけは守りたくて電話をくれたその夜だって及川先生との時間を終えた後だったけど、いつも通りに…って自分に言い聞かせていた。
「電話してくれてありがとう」
「あれから忙しくなってよ。連絡出来なくて悪かったな」
「高橋先生授業中に怪我して入院したんでしょ?その代わりもしてるんだよね?」
「そう。三日で退院出来たけど復帰すんのは来週かららしい」
「そうなんだ。でもたいした怪我じゃなかったんでしょ?ならよかったね」
「ああ…。昨日電話でも問題ないっつってたから。……でもこうやっていちかとゆっくり電話できるのも久しぶりだな」
「……うん」
複雑な感情を押し殺してそう噛みしめるように答える。でも誰にも邪魔されない自分の部屋だから、スマホから聞こえる先生の声に久しぶりに心を落ち着かせる事ができたんだ。
「そうだね。全然会えなかったね」
「この前は悪かったな。俺のせいで」
「そんな風に思ってないから。…及川先生も何も言ってこない?」
「ああ。あれ以来なんも聞いてこねぇよ。普段通り過ぎて気持ち悪ぃくらい」
「そっか。……よかった」
「いちかは変わりねぇか?」
「…うん」
「なんか声が疲れてるみてぇだけど?」
「そんな事ないよ。ほら今日は金曜日だし一瞬間の疲れがでただけ」
「そうか。…ならいいんだけどよ」
「心配かけてごめんね」
そう言葉にしながら“私のことは心配しないで”と心のなかで呟く。先生の声が聞けて泣きそうなくらいに嬉しいのに、さっきまでの及川先生との行為がチラついて胸は張り裂けそうだ。