第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
「じゃあ先に乗ってるね。…ちゃんと隠れてるから」
「…ん、じゃ待ってろ」
「はーい」
ニヤける頬を手で押さえつつ周りを確認して先生の車へ乗り込んだ。まだ座れない助手席。でもそんなことは気にもならないくらいに今は幸せだからいい。
「おまたせ」
コンビニの袋には飲み物が二本。ちゃんと私の好きなメーカーのジュースも入ってる。後部座席から見える先生の横顔につい触れたくなってしまう。
「んじゃ行くか」
「待って?」
外はもう暗くなり始めている。周りには人はいないし、今から先生との甘い時間が待っていると思えばどうしたってテンションは上がってしまう。身を乗り出して運転席に座る先生の横顔に顔を近付ける。
「おい。危ねぇだろ?」
「キス…」
「ったく…。一回だけな?」
目を閉じて待つ唇に触れるいつもと同じ柔らかな感触。少しの時間だったけど一瞬で私の心を満たしてくれる先生とのキス。
「満足か?」
「うん」
「じゃ行くぞ」
「はい」
エンジンがかかり、カーステレオから流れ始めるBGM。珍しくラブバラードなんて聴いてるんだって思ったけど、今の二人にはぴったり合っていて好きすぎて切ないなんて贅沢な世界で穏やかに先生を想っていた。
「今日なにしてたんだ?」
「ずっと寝てた」
「だから返信遅かったのか」
「聞いてくれる?昨日、友達と電話してて、急に妊娠したかもなんて言われちゃってさぁ…、それで長電話になって」
「それ、うちの生徒?」
「じゃないよ。中学の時からの友達。でもお昼前になって生理きたって連絡来たから多分大丈夫」