第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
及「いや俺にはそう見えた!そうとしか思えない」
岩「あほらし…」
及「俺にとって大きな一歩なんだって!!」
岩「うるせぇな、ここ店ん中」
「それはそうと松川君。一人コーヒーだけやけどええの?」
松「うん。そんなに好きじゃないから」
「私の一口いる?」
及「え!?」
松「いいの?」
「ええよ?」
松「じゃあ貰おうかな」
岩「おい!」
及「ちょ、ダメだって。まっつん甘いもの食べると全身アレルギー出るかもしれないよ!?俺が食べてあげるから」
岩「なんでお前が食うんだよ」
及「なんで岩ちゃんが邪魔すんのさ」
岩「いちいちお前が絡んでくるからだろ?」
及「言っとくけど岩ちゃんの方が絡んで来てるからね?」
岩「あ?」
花「まぁまぁ二人とも。…でもいちかちゃん、分かってて煽ったでしょ」
「さぁ?……で、松川君、どうする?私の、一口いる?」
松「気持ちだけ貰っとく。後で怒られそうだから」
「ほな私全部食べてしまお」
いちかは最後の一口を名残惜しそうに味わっている。くそっ、完全にしてやられた。松川も花巻も笑うのを堪えているのが視界に入るのが腹立つ。勢いに任せて呷ったコーヒーはやたら苦かった。
「ね、君たちって高校生かな?」
突然向けられた聞いたことのない声に五人の視線は声の主に集まった。見覚えのない綺麗な女性がこちらに微笑みかけている。
花「え?誰?誰かの知り合い?すんごい綺麗な人なんだけど」
及「いや、俺知らない。まっつん?」
松「俺も初めて」
及「じゃあさ、いちかちゃんのお姉さんとか?」
「私一人っ子やからお姉ちゃんなんておれへんけど」
「あ、ごめんね。挨拶が遅れました。私、ブライダル関係の仕事をしてる者なんだけど、今ね、モデルを募集しているの」