第68章 ❤︎ 青城3年とルームシェア
窓を開けると爽やかな風が吹き抜けてカーテンのすき間から午後の日差しがフローリングを照らす。とりあえず机の上に置いてあった真新しい除菌シートの封を開ける。
「はい。使って」
「ありがと」
シートのお互いの体液でベトベトだった。アルコールのひんやりとした冷感も独特の香りも今は暴走し過ぎた欲までも鎮めてくれる。
「除菌シート沢山買っといてよかった」
「そだねー。よく手に入ったね。今まだ消毒液って品薄でしょ?」
「こうなる前から買い置きしてたの。災害とかに備えて」
「へぇ、偉いじゃん」
「一人暮らしだからね」
「そっか。俺よりかなり優秀だね」
「ありがと……。あーでもなんかしらけちゃったね」
「そうだね。いちかの意外な一面も見れたし」
「一旦休戦しない?」
「賛成。このまま横になってようよ」
「そこのクッションとって」
「俺にも半分」
「いいよ」
長方形のクッションを半分こしながら床に転がって天井を見上げる。
「イキたいのにイケないとか屈辱だったんだけど…」
「もしかして怒ってる?」
「怒ってはないけど」
「でもすごかった。あんな沢山出るんだね」
「俺だってびっくりだよ。あんなことされたこともないし」
「言っとくけど私も初めてだから」
「俺、ヤバい扉開けちゃったかも…。いや、こじ開けられちゃった?」
「知らない。でも責任はとらないからね」
「冷たいなぁ」
私だって自分がこんな人間だなんて思わなかったんだからむしろ及川に責任とってもらいたいくらいだ。
「ねぇ…」
「何?」
「責任取んなくていいから次はリベンジさせてよ?」
「気が向いたらね」
「んじゃキスしよ?仲直り」
「喧嘩してたっけ?」
「してないけど普段の関係に戻りたいから」
「もう戻ってるじゃん」
「単に俺がしたいだけ」
「可愛いから許す」
もう躊躇いもなくて今日一日及川といて一番甘い時間かもしれない。花巻や岩泉とは違う、松川といる時みたいなそんな感じ。でも抱く感情の理由なんて今はどうでもいい。
「したことはバレちゃうだろうけど中身はちゃんと内緒にしててね」
「大丈夫。俺だって言えないよ」
及川との秘密。“リベンジ”の言葉に少しだけ期待している自分もいる。
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