第4章 ヤクザと生贄彼女
髪をワシャワシャと掻き混ぜるだけ掻き混ぜる。少し不満そうな顔をしているのは、何故だろう。
私の方が不満だ。
「さ、左馬刻さんっ! 何してるんですかぁっ!?」
「うるせぇ。他の男に気安く触られて、喜んでんじゃねぇよ……」
ボソボソ言っていて、後半が聞き取れなくて聞き返すけれど、答えてはくれなかったけれど、最後にまた頭を撫でられた。
次はちょっと、優しかった。
部屋に戻って、改めて買い物に行こうとすると、左馬刻さんに睨まれてしまった。
けれど、食材がないのは事実で、外食はあまり好きじゃないから、微妙な顔をした私に気づいたのか、一緒に買い物をするという結果に丸く収まった。
「あら、碧棺さん、可愛い子連れて、彼女かい?」
「やぁ、左馬刻さん、今日は彼女と一緒か?」
二人で歩いていると、左馬刻さんが色んな人から声を掛けられていて、恥ずかしくなって、私は会釈だけして俯いて歩く。
「すみません……変な誤解させてしまって。私が一緒にいるからですよね……」
眉間に皺を寄せた左馬刻さんに、遠慮気味に言うと当たり前みたいに頭を撫でられる。
「別に気にしてねぇ」
誤解されるなんて嫌だろうに。気にならないなんて、変だ。
お店に着いて、カゴを持つとそれを奪われてしまう。
カゴを持つ左馬刻さんの姿が、妙に似合っていて、バレないように笑う。
左馬刻さんの好きなお肉料理をいくつか考えながら、カゴに入れていく。
気づいたら左馬刻さんが、まるで小さい子みたいに、興味津々な顔で色々な商品を手に取りながら、キョロキョロしている。
可愛くて、また笑う。
「お前、酒飲めるか?」
突然こちらを見て聞かれ、ビクリとする。
「少しなら……」
そういうと、左馬刻さんは少しだけ嬉しそうに口角を上げて、お酒を選び出した。
そこまで強いわけじゃないし、最近飲んでいないから、あまり強いお酒は困るなと思いながら、会計を済ませる。
荷物まで軽い物しか持たせて貰えず、気にしながら歩く。
「左馬刻さんっ!」
聞き覚えがある声。
猫撫で声で左馬刻さんの腕に絡み付く女性。
さっき、私に絡んで来た人だ。
「左馬刻さん、この女何? こんな女放っておいて、私と遊んで〜?」