第42章 推すのに忙しい私を押してこないで*煉獄さん
それでも最推しの地位とはそんな簡単には変わらないもので
「あぁでもやっぱり、あの慈悲深い瞳には誰も勝てないのよ!」
「何の話だ?」
「太陽と月って感じ?あぁもうおばみつ最高!!!」
「こら!」
「尊い!尊すぎるぅ~!!!」
「話を聞くんだ柏木!!!」
私は煉獄様の前で推しへの愛を爆発させてしまったのだった。
「つまり君は、甘露寺のことを慕うあまりこのような行為に興じるようになったと…そういうことか?」
私の目の前にいる煉獄様は胡座をかきながら身体の正面で両腕を組み、確認するようにゆっくりとそう尋ねてきた。
「……はい。その通りでございます」
私はと言えば、遠慮なく寄こされる煉獄様の視線に耐えながら正座の姿勢を保つのみだ。
「命を救ってくれた甘露寺を慕うことも、恩返しのために仕えようとする気持ちも、あの2人が結ばれればと思う気持ちも、全てわからなくはない。だがこうしてコソコソ身を隠し、覗き行為をするのはいいこととは言えないな」
「……はい」
自分でもよくないことだとはわかっていた。
「君がこのような行為をしていると知れば、甘露寺がどう思うか、考えたことはないのか?」
「………あります」
最初は純粋に、ちっとも発展する様子のない2人の為に何か出来ることはないのか、背中を押すきっかけがみつからないのかと、この行為を始めた(そもそもそれが駄目なのだが)。
けれどもいつの間にかこの行為の目的が、”蜜璃様の為””2人の為”から、2人の様子をただただ見たいという自分の欲求を満たすものへと変わってしまった。
「…っ…一度はやめたんです!こんな事をしているのを蜜璃様に知られたら…間違いなく嫌われてしまう…お2人はお2人なりに関係を進めていくから大丈夫と…そう思って!でも…あの二人、いつまで経っても文通と食事しかしないんですよ!?お互いを慕い合っているのは明白なのに!伊黒様の話をするときの蜜璃様はあんなにも可愛らしく、蜜璃様の側にいる伊黒様は別人みたいに慈愛に満ちていて…あれでなんでくっつかないんです!?じれったい!!でもそこがまたいい!!!」
「途中から話の方向を見失っている!しっかりするんだ柏木!」
「…っはわ!?失礼いたしました!!!」