第39章 あなたの声は聴こえてるよ✳︎不死川さん※微裏
「…動揺なんてしてない。変なこと言わないでくれる?」
「あっそ~?でもさぁ、首の後ろにそんな赤い痕付けた女にそんな事言われても、何の説得力もないぜ?」
「……痕?」
私は男の言っている意味が理解できず、頭の中は疑問符で埋め尽くされ、目の力も抜いてしまった。
男はそんな私の様子を楽し気に見下ろし
「こ~こ。つけてもらったんでしょ?風柱に。鬱血痕!」
私のうなじを指さしながらそう言った。
「…鬱血…痕…?」
男から発せられたその言葉に、私は驚き目を見開き固まってしまう。けれども任務に出る前の不死川のあの言動と、目の前の男が言っているわけのわからない話がパッとつながり
「…っ!!!」
私は咄嗟に左手でうなじを覆い隠した。
……いつの間に?…私が寝てるとき…でも…なんで…?
相手に鬱血痕をつける…私の中にあるその行為のイメージは
”この人は、こいつは、自分のもの”
と示す所有の証だ。
まさかそれを不死川が自分につけるなど、私には信じられなかった。そして信じられないと同時に
……やばい…嬉しい…
そう思ってしまった。
「…やっば。そんな女の子の顔も出来んの?…俄然興味が湧いちゃった」
「…ちょ…離しなさいよ!」
油断している間にサッと両手首を掴まれてしまい、厭らしい笑みを浮かべた男の顔が私のそれに近づいてくる。
「でもさ~、柏木さんと風柱って、恋仲ってわけじゃないんでしょ?」
「……」
その問いに、私は思わず口を噤んでしまう。
「恋仲じゃないのにそんな痕があるってことはぁ…風柱がその立場を利用して、柏木ちゃんを食いものにしてるってことだ!そうか!そうに決まってる!」
「…っな…不死川がそんな事するわけないでしょ!?ふざけたこと言わないで!」
「え~。でもでも、俺にはそうとしか思えないけどなぁ…だって柏木ちゃん”尻軽”じゃないんでしょ?」
「…っ…」
その物言いに、私はそいつの口車に乗ってしまったことをようやく理解した。