第2章 桜の香
昔のことを思い出していると、急にカカシに頭をわしゃわしゃと撫でられる。
「わっ!急に何??
髪くしゃくしゃなるやん!」
照れ隠しもあり、語調がきつくなってしまう。
「あ、ごめんつい。
悲しそうな顔、してたから」
「……誰にでもそーゆうこと、するん?」
嬉しいのに、可愛くないことばっか言っちゃうな……。
でもカカシは気にする風もなく言葉を続ける。
「んー、まぁ、先生だったときのクセかも。
その子たちも今は大きくなって、夕月と同じくらいだけどね」
「カカシって先生やったん?」
「そ。少しの間だけだったけどね。
下忍の子たちと一緒に任務やってたんだよ」
「そうなんや。
カカシの先生姿とか、ちょっと見てみたいな」
「え?ほんと?
でも黒板の前で授業するような一般の先生みたいなのじゃないけどね」
カカシのことを知れるのはなんだか嬉しい。
もっとたくさん聞きたい。
わたしは思いつくままにたくさん質問をした。
ただただ楽しくて。
カカシも嫌がることなく答えてくれた。
でも、なんだかカカシの目がトロンとしてくる。
そういえば、今何時なんだろう。
時計を見ると、12時を回って日付が変わってしまっていた。
わたしは少し寝たから眠たくはなかったが、よく見るとカカシの目の下にはまたクマができていた。
「カカシ、また寝てく?
なんかめっちゃ眠そうやで」
「ん、そのつもりで来たんだよね。
最近ホント眠れなくて。
でも、この前ここに来た時にすごくよく眠れたから……」
え?なにそれ……。
わたしの隣やったら眠れるってこと?
嬉しくて胸がドキドキしてくる。
でもカカシが目を閉じて眉間の辺りを指で揉んでいるのを見て、いっきに現実に戻る。
疲れてるんだから早く寝かせてあげなくては。
「ゴメン。
疲れてんのにどーでもいい話ばっかして」
「んーん。
夕月が楽しそうでオレも嬉しかったから」
目を細めて笑うカカシにときめいてしまうけど、今はそれどころではない。
「今布団持ってくるからちょっと待ってて!」
わたしは前みたいにテーブルを端に寄せると、急いで布団をひと組みこちらに引っ張ってきた。
「どうぞ!」
「はや……」
「だって、もう寝転がりたいやろ?
はい!」
わたしは掛け布団をめくりカカシを促す。