第1章 愛しの及川さん
19.話をして欲しいの
某百貨店のジュエリーコーナーで、徹は「うーん…」と唸っていた。
「どうしたの?」
「うん?いや、どれがに似合うかなー?って。及川さん考え中」
徹の言っている意味が分からない。
「あっ!これいいかもっ!!指何号?」
「えっ?7号だけど…」
「すみませーん。これの7号見せてください」
徹は私に指輪をくれようとしてる?
「可愛いですね」
店員さんが微笑んでいる。
「うん、うん。可愛い」
「…確かに可愛いけど…徹。どうしたの?」
徹の様子が明らかにおかしい。
「好きな子にプレゼント送るのの何が悪いのさ?」
「そういう訳じゃなくて…」
「そちらのペアでしたら男性用はこちらになります」
「じゃあペアで下さい」
結局押し切られてしまった。
貴方は何を焦っているの?
私は徹をずっと見てた。
だからこそ、どんな些細な変化にも気づいてしまう。
徹は何が不安なの?
貴方の話をして欲しいの。