第5章 桜 色 の 泪[煉獄杏寿郎]
だが俺も先走りが溢れ、膨れ上がったモノは今にも吐き出しそうなほどビクビクと震えて耐えている。はなが果てるまで我慢が持つかも危ういほどだ。
はなの腰を掴み手前に引くと、
「あぁっ! んっ」
俺の肩に爪を立てながら、小刻みに強く押し付けたはなの全身に力が入り、一気に脱力した。
「うまく気をやれたな。湯船に浸かろう」
俺の胸に倒れこんだはなは呼吸は荒く全身力が抜け切っている。大きく上下する背中をさすると、俺の首に猫のように頬を擦り付けてくる。
「杏寿郎様…私ばかりよくなって…杏寿郎様は?」
硬いままの状態で堪えていることは、はなもわかっているはずだ。今もハナの腰には俺のものが当たっている。
だが、このままでははなを壊してしまう。一度冷静にならなければならない。
体温ほどの湯は、昂った神経を緩ませるにちょうど良かった。
「まずは体を温めよう。また冷えてしまった。まだ時間はある。湯浴みをしたら、君の腰が立たなくなるまで抱くつもりだ」
何日も鬼を追った俺は思いのほか気が立っていたようで、湯に体を沈めた途端、全身の筋肉が緩んでいくのを感じた。
このまま抱いていたらどうなっていたか。見境なく欲をぶつけていただろう。
「杏寿郎様」
「ん?」
湯から出したはなの手が俺の頬を包んだ。細く小さい手で、何度も撫でた。まるで母が幼子を慈しむように。
「私には我慢をしなくて良いのですよ? 欲も、悲しみも怒りも喜びも全部ぶつけてください。私はそんなやわじゃない。受け止めることくらいできます」
その言葉に、心を読まれたかと思った。
甘美な声を聞かせたと思えば、今度は凛とした声色で言い切る。これだから俺は君には敵わない。
「いや、しかし…鬼殺で昂った俺は君に酷くしてしまう」
「それでも構いません。それとも私では役不足ですか?」
「そんなはずあるまい! 君でなければ鎮まらん」
「良かった」
唇を寄せれば、嬉しそうに笑い、俺の首に腕を回した。
君だって、やるせない思いをすることがあるだろう? 悲しみや怒りを感じることも。