第3章 懐 想 [煉獄杏寿郎]バレンタイン
「そっか。杏寿郎さんの周りには良い人がたくさんね!」
俺は手を洗うと、冷凍庫から保冷剤を出しはなの横に腰かけた。
『痛むか?今度は何でやけどした?』
なぜか…はながやけどしたことが初めてでないような気がした。
「あ…のね、天ぷら…をね?」
天ぷら?
バレンタインに天ぷらか?
『なぜ天ぷらを?』
「だって…杏寿郎さん…さつまいも好きでしょう?だから天ぷらをね?ってバレンタインなのに色気のない料理でごめんなさい…」
ん…?
俺は…彼女にさつまいもが好きだと言ったか?
『俺は…君にさつまいもが好きだと言ったか?』
「えっ?……当然のようにさつまいも好きだと思ってた…けど、言われてみれば…言われたことなかった…かも」
『俺は…初めて会った時から、君を知っていたような気がしていたが…前世でも結ばれていたのかもしれないな…』
そうだ…恐らく前世で俺達は結ばれていた
その時も恐らく、君なしでは生きられない程に愛していたはずだ
彼女の手を冷やしながら、なぜか懐かしい想いを馳せながら、照れたように笑うはなの髪を撫でた
「そうかもしれないね。あっ…もう大丈夫よ。
痛みが引けたみたい!お料理、仕上げちゃうから待ってて!疲お腹空いたでしょ?」
『俺も手伝おう!』
「だめよ!それじゃ、バレンタインの意味がなくなっちゃう…」
『君と料理する時間が、俺にとって特別だと言ってもか?』
この懐かしい気持ちを手放したくなかった
君の横から少しも離れたくない
「わかった…お手伝いお願いします」
にっこりと可愛らしい笑顔を向けてきて、思わずはなを抱き寄せた。
『はな、ありがとう。ずっと会いたかった。こうして君に触れたかった…会えない時間が長すぎた…』
「うん…長かったね…私もずっと会いたかった」
その言葉を聞いてしまえば、自然と唇は重なってしまう
軽く、重ねるだけのキスをして、はなが唇を離した
「……もっとしたいけど…頑張って作ってた料理がまだ途中なの…」
あぁ…だめだ…愛おしくて堪らない
だが…食事をしてからでも、彼女を愛す時間はあるだろう