第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
次の日の夕方。1泊2日の短い合宿が終わった。
「じゃーなー黒尾!」
「また今月合宿で会うけどな」
「おう、森然でな!
もまたな!」
次は埼玉の森然高校で1週間の合宿。
東京に比べて自然は多いけどくっそ暑い。
そんでクソ虫いる。
『うん、またね!夏休みになったらすぐ会えるけど!』
「だなー!てか!メアド教えてよ!」
『あ、うんっもちろんだよ』
「あんがと!赤葦も交換してもらえば?」
「え、いや俺は」
『赤葦くんもしようよ!』
「…じゃあ。はい。」
3人で携帯を出し合って互いの連絡先を交換している。あの件で赤葦との距離が一気に縮まったらしい。…目離すとすぐこれだからな。どこで誰から好意もたれてるかこっちは気が気じゃねーっつの。
帰りのマイクロの席は最後に乗り込んだ俺とが隣同士だった。そんなことに意識してるのは俺だけであって、彼女は座るなりコクコクと直ぐに寝始めてしまった。
いつの間にか寝てしまった俺は振動で目が覚めた。右側に感じる重み。が俺によりかかって寝ている。
ちょっと名残惜しいけど
「…もう学校着くぞ」
『んぅ…ん、』
そうだ。こいつは寝起きが悪かった。
あと五分だけが口癖だった。
「起きねぇと…キスしますよ?」
『…ん、』
聞こえてないのかなんなのか全く瞼の開く気配が無い。でもこれはさ…起きないお前が悪いよ。
1番後ろの席。通路を挟んで隣の2人席は荷物置き。俺たちは誰からも見えない。夢の中にいる彼女の額にそっとキスを落とす。
「……〜っ何してんだ俺。」
『…ん、…もう着く…?』
「っも、もう着くよ」
バレてない?…え、バレてないよな?
「…今起きた?」
『んー…起きた。起きました…ぃま。』
こりゃ起きてないな。
〜♪
の携帯から聞こえるメールの受信音。ドリンクホルダーにすっぽりとはまっている携帯に目をやると 赤葦くん と表示されている。