第7章 夏の思い出
私は立ち上がり、窓を開けテラスに出てみるとちょうど遠くの空がオレンジ色に染まり始めたところだった。
朝日が顔を出し、キラキラと光る水面が徐々に色付いていく。
「・・・わぁ。」
柵に身を預け景色に目を奪われていると、
ふわっと何かが肩に掛けられた。
これって、、
侑「そんな短パンにTシャツじゃ寒いやろ?」
振り向くと侑君が立っていた。
私の肩に掛けられたのは、さっきまで侑君がくるまっていたタオルケットだった。
「・・ありがとうございます。」
侑「皆んなの大事な姫さんが風邪引いたら大変やからな。」
「・・何ですかそれ。」
ヘヘッと笑い、侑君も私の隣に立つと柵に身を乗り出した。
侑「うっわー!眩しっ‼︎てかホンマに綺麗やなぁ!心が洗われるわー」
侑君はすぐ横に立っているのに、タオルケットからは微かに侑君の匂いがして、何だか抱きしめられているような錯覚を起こしてしまうのは朝の事件のせいだろうか…。
私はタオルケットをぎゅっと握りしめる。
侑「なぁーんか、ともみちゃんホンマ変わったなぁ。」
「え?」
横に立つ侑君をチラリと見上げた。
侑「最初はとっつきにくいし喋らないし笑わないし、の能面地味女だと思っててん。」
「・・・はい。」
侑「でも久々に会ったら表情明るくなってるし、時々だけど笑うし、しっかりしてるようだけど無防備なトコあるし。」
景色を見ていた侑君の視線が私を捉える。
普段とは違う真面目な顔つきに私の心臓が音を立てた。
侑「サムと角名の気持ち、わからんでもないな。」
「・・治君と倫太郎君の気持ち?」
侑「・・・まぁ、姫さんは黙ってみんなから愛されたらええねん!俺は遠くから見とくわ。」
侑君は急にタオルケットを掴むとガバッと私の頭に被せた。
視界が遮られ真っ暗になる。
「ちょ、ちょっと」
侑「ほな、俺は朝のランニングに行ってくるわ。あとでなー。」
侑君の足音が遠ざかって行く。