第32章 侑end
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パスケースを受付で返す手続きを終え、玄関ホールに併設されたラウンジへと足を向けた。
夏希さんと名乗った女性はこちらに背を向けて椅子に座っていた為、後ろから控えめに声を掛けた。
「あの…私はこれで失礼致しますので…」
夏希さんは振り向くと、しっと人差し指を口に当てニコリ、と笑みを浮かべると誰かと電話をしていたのか、すぐに通話を終わらせた。
「あっ、すいません!お話し中でしたか?」
夏希「うん、いーの。原さん、やったっけ?少しお話ししたいんだけど、こっち座らない?」
なんとなく断れない雰囲気を醸し出す彼女に、私は「はぁ、、」と頷き、向かいの椅子に腰を下ろす事にした。
・・何だろう…。
パス無しで堂々と入ってくあたり、ムスビィの会社の人かな…。
ぎこちない笑みを浮かべる私とは正反対に、
夏希さんは長い足を組み、髪を掻き上げた。
夏希「あなたの反応からして、私の事知らないみたいだけど、ムスビィの関係者ってワケじゃないみたいね?」
「あ、はい。日向選手と個人契約で栄養管理をさせてもらってますので…。」
夏希「日向選手と…?ふーん…。」
夏希さんは何か腑に落ちないような表情を浮かべ頷いた。