❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
大人数だと寄りたいところへ寄れないかもしれない、と気を回しての事だろう、彼方の提案に凪が頷いた。組分けを問えば、友人は片手をひらひらと事も無げに振り、まるで二人を追い払うような仕草をしてみせる。つまり、凪と光秀、二人きりで祭りを楽しむ時間を作ってくれるという事だ。彼方と佐助の気遣いに眉尻を下げ、言い募った凪であったが、それは友人にあっさりと一蹴される。
「何言ってんの、綿あめ食べながら散々二人の世界作ってたくせに」
「うう……、」
羞恥とバツの悪さから、したたかに胸を抉られたような感覚になった凪が、小さく呻いて片手で心臓の辺りを押さえた。そんな彼女の頭をよしよしと撫でてやりつつ、光秀が彼方と視線を合わせる。
「という訳で明智さん、凪の事宜しくね」
「ああ、そちらもあれだけ武将が揃っていれば問題は無いだろうが、妙な者達に絡まれないよう気をつける事だ」
「大丈夫、いざとなったら幸村辺りに何とかして貰うから。集合場所はー…まあスマホで連絡取れば大丈夫でしょ」
「彼方、ありがとう。佐助くんにも伝えておいてくれる?」
「オッケー、それじゃあ後でね!」
彼方の言葉へ光秀がおもむろに頷く。この人混みだ、面倒事に巻き込まれないとも限らない。凪の友人に何かあっては事だと、さり気ない注意を促すと、彼方がけたけたと笑って片手をひらりと振ってみせた。具体的な集合場所は特に決めず、互いにスマホで連絡を取り合う旨を伝えて、彼方が二人へ手を振りつつ歩き出す。その背へ凪が礼を紡ぐと、振り返った友人が笑顔で頷いた。武将達と合流した彼方の姿を見届け、光秀は一度解いた手をしっかりと繋ぎ直す。
「さて、せっかく彼方殿と佐助殿が気を回して作ってくれた逢瀬の刻だ。お前の望む場所を見て周るとしよう」
「あ、じゃあ光秀さんと一緒に食べたいものがあるので、そこから行きましょう!」
光秀と二人、五百年後の世でゆっくりデート出来る貴重な時間だ。彼の言葉へ破顔すると、凪が繋いだ手をくい、と引っ張る。