第6章 体育祭、それぞれの想い
猫柳さんは少し恥ずかしそうに頬を掻く。ミリオと波動さんと合流して安心したのか、震えが少し収まってきたようだ。
「えっと、実は…」
「怪我したのかい!?救護室まで運ぶよ!」
ミリオが猫柳さんに手を伸ばす…
「俺が運ぶよ
猫柳さん、少し力がうまく入らないだけで、怪我はしてないよ。
無理させたのは俺だから、俺が支えてる」
自分でも吃驚するくらい、吃らず、落ち着いた声だった。俺は猫柳さんを自分の腕に座らせるよう、抱く体勢を変えた。
「お、重いからいいよ…!降ろして!」
「全然。それに歩けないんでしょ」
バタバタと抵抗する猫柳さんに「床に座り込んだら皆が心配するから、足に力がはいるまでこのままでいいよ」と。俺は最もらしい理由を本人にしか聞こえない声量で言う。
観念したのか、猫柳さんは俺の腕中で大人しくなる。
「ううっ、恥ずかしい」
今更恥ずかしがるなんて。
可笑しくて、忙しなくてーーー可愛い人だ。
「騎馬戦が始まる時だって、俺の肩に乗ってたでしょ」
「そ、そうだけど!今は人の姿だしっ」
気にするとこはそこなんだ、と心の中で突っ込みを入れる。
「それに、天喰くん。目立っちゃうよ?」
「今は!!それを言わないでくれ……!!!」
忘れていた観客の視線を思い出し、顔が青ざめる。そんな俺を見て猫柳さんは「天喰くんって、本当に面白いよね!」と笑う。
「猫柳さんには負けるよ」
「緊張しいだけど、格好良いヒーローだ!」
今だけ、今だけは。
どうかこのままで、少しでも格好いいヒーローでいさせて欲しい。
猫柳さんの笑顔は何故か胸が苦しくて。彼女に気づかれぬよう、苦しさを紛らわすように僅かにぎゅっと力を入れて抱き締めた。
猫柳さんとの騎馬戦は、このようにして幕を閉じた。
長かったような、短かったような。
無事に決勝戦選出も勝ち取れたというのに、寂しいようなホッとしたような。様々な感情で胸が一杯になった。
後に、インターン先のファットガムから「好きな子と騎馬戦できて良かったなぁ!え?好きな子ちゃうん?!」とパワハラを受けるのはまた別のお話。
* * *