【MARVEL】This is my selfishness
第9章 小話1
ティッシュを箱ごと渡された彼は数枚取って、そのままアイツのほうへ行き、位置を確認すると躊躇なく踏みつけた。
ゴッ!という音と共に微かに潰れる音が聞こえて、思わず『ひっ、』と声が漏れた。
「目標沈黙したぞ」
言いながら持っていたティッシュで綺麗に拭き取ってくれたようで、「これどうする?」と空いてる手で指さした。
『あ、えっと…あっ!この袋に入れてめちゃくちゃ縛って!』
ちょっと距離を取りつつ小さなビニール袋を渡して入れてもらうとすぐに上をキツく結んで見えないようにしてくれた。
『〜〜〜!!!!!ありがとう〜〜〜〜!!!!!』
バッキーがこちらに正面を向けた瞬間、あまりの嬉しさに抱きついた。
『ほんとにありがとう!!!!助かったよ〜!!!!これで安心して暮らせるよ!!!』
抱きついたまま顔を上げると、バッキーは眉尻を下げるようにして少し困ったような笑い方をしていた。
「それは良かったんだが…お礼にしては大胆すぎないか?」
「沈黙したとはいえ、こいつもまだ捨ててない」と言いながら袋を見せる。
『大胆…?あばばばごめ、』
自分の格好を思い出し、慌てて離れようとしたところで────
パサ、
『!!!!』
わたしが激しく突然動いたせいで緩んでしまっていたのか、体に巻き付けていたバスタオルがわたしの足元に落ちた。
咄嗟にバッキーから離したばかりの両腕を胸の前でクロスしてしゃがんだ。
『?、!』
「お、落ち着いてタオル、拾ってくれ…見てないから……」
その声に上を見あげると、確かにバッキーは天を仰ぐようにしていてこちらを見ないようにしてくれていた。
何故か両手を降参ポーズのように挙げて(片方の手にはアイツ入りの袋を持ったまま)。
『ご、ごめんなさい、何から何まで…』
拾ったタオルを急いで再び体に巻き付ける。落ちたばかりだから砂とか付いてないはず…!
「俺は良いんだ、俺は。役得ってやつだ」
わたしに抱きつかれたところで、なんなら裸を見たところでどう考えたって役得にはならないだろうに…なんて気遣いのできる人だ、と感動した。
何から何まで行き届いてる人だ。