【MARVEL】This is my selfishness
第9章 小話1
アパートに着くと、わたしが先にエントランスの扉を開けようとしていたのに背後から伸びてきた手が当然のように扉を開けた。
それにわたしも癖のようにお礼を言って階段を上がる。
『ふふ、ウォーキング付き合ってくれてありがとう』
「偶然、帰りが一緒になっただけだ」
目元に優しい笑いジワを作りながら冗談を言うもんだから、胸がきゅうと柔く締め付けられた気がした。
お互いの部屋の前でわかれ、鍵を開け自分の部屋に入ると荷物を置いてすぐに脱衣所で服を脱ぎシャワーを浴びた。
しまった。
あまりにも汗が気持ち悪くて急いでシャワーを浴びたから着替えを何一つ持ち込まなかった。
軽く体を拭いて、バスタオルを体に巻いて脱衣所を出た。
廊下に出た時になんとなく玄関の方を見た。
そして叫びそうになった喉がキュッと締まって、結局息を飲むだけになる。
ゴ、ゴキ、、!
いや、心の中でも言いたくないあの虫!!!
てかデカッ!!!!!何、どっかから入ってきた?それともわたしの部屋から発生した?!後者だったら最悪!!!!
どどどうしよう…!
いま用があるのは玄関のほうじゃないけど、いま見逃して『アレがいるかもしれない』って思いながら気が気じゃない状態で生活したくない!
かと言ってわたしはアレを退治できない。死んでるのを間接的に捨てるとかするのも無理。したくない。考えたくない。
あっ!!!
見たくは無いけど目を離した隙にどこかへ逃げられるのも嫌で目視したままゆっくりと脱衣所から荷物を置いているテーブルのほうへ行き、スマホを手に取る。
「何かあったら呼んでくれ」ってバッキー言ってた!!!
いやまさか彼もこんなことで呼ばれるとは思ってないと思うけど!!!
震える手でスマホを操作しながらも決してアイツからは目を離さない。茶黒いアイツはまだ動いておらず、同じ場所にいる。
何回かコールが鳴ってすぐにバッキーが出てくれた。
〈どうした?〉
『助けて!』
〈何があった?〉
『あっ、えっと、虫、大丈夫?!』
〈大丈夫って?〉
『退治!できる?、!触れる?!』
〈まあ、問題は無いな〉
『良かった!あのね、アイツ、アイツがいてっ…!ギャア!動いた!』