第5章 絶望
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リヴァイさんと再会した次の日、イェーガー先生が避難所にかけつけたが、その日の夜のうちに忽然と姿を消し、エレンとミカサは二人避難所に取り残された。
私は二人と共に避難所で生活をしながら、できうる限り怪我人の手当や診療に奔走した。
壁の崩壊から、二か月が過ぎた。
相変わらず私は避難所で避難民の診療に追われていた。その惨状は回復するどころか、悪化の一途を辿っていた。
元々のトロスト区民が、避難民に対して受け入れるどころか、嫌悪の表情を見せるようになってきていたのだ。
無理もない、領土の三分の一を失った人類は、生きる糧も同時に失っていたのだから。最も広いウォールマリア内の区域で盛んだった農業・畜産業は無きものになり、食料不足が深刻になっていた。
最初は同情から避難民に手厚く対応する姿勢を見せていたトロスト区民も、いざ自身の命が脅かされるとなると、まず余所者に牙を剥くのは容易に想像できた。
エレンたちはそんな環境の中でも自分達で働き口を見つけ、労働に準ずることで生きていく術を見つけていたが、労働力にならない病人・けが人・老人は劣悪な環境に追いやられていくだけだった。
このままではダメだ。なんとかトロスト区に収容しきれない、働くこともできない人たちを受け入れる場所を設けなければ。
私はエレンとミカサに別れを告げ、ある決意を胸に王都の家に戻った。