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鬼滅の刃〜炎の絆〜

第3章 家族の絆ー後編ー


一度蝶屋敷に戻り、アオイやカナヲ、蝶屋敷の子たちにこれから任務に行くことを伝え、蝶屋敷を後にした。

任務前に寄りたかった場所。

それは家を出てから一度も帰ることのなかった桜の生家、煉獄家だ。

何年振りだろう…と、遠くから暫く生家を眺めていると、父が酒を買いに行こうとしていたので、気配を消してスッと背後に立った。

「……お久しぶりです、父上」
「?!」

急に声をかけられた槇寿郎は驚きのあまり飛び跳ねそうになっていたが、なんとか堪えていた。そして桜の姿を確認すると鋭い目つきになる。

「桜……!何しに帰ってきた」
「酷いですねぇ…、久しぶりに会った娘に言う言葉じゃないと思うんですけど」
「五月蝿い!…お前こそ全く帰ってこなかった癖して今更なんだ!」
「“家の敷居を跨ぐな”って言ったの父上じゃないですか」

「自分で言った言葉、忘れたんですか?」とニコッと笑って話すが、言葉には棘がある。そしてああ言えばこう言う状態だ。

「フンッ」

俺はもう知らん、とばかりに桜に背を向けて酒を買いに向かおうとする。その姿を見て、相変わらずだなぁ…なんて思った。

今も昔も父は全然変わっていない。

本当にこれでいいのだろうか、と自身に問えば答えは一つ。このままでいい筈がない。

「………身体を大切にしてほしいです」

気付いたら父の背中に向かってそう言っていた。

決して大きく呟かれた言葉ではなかったが、その言葉は確かに槇寿郎に届いていた。

槇寿郎は大きく目を見開いて進めていた足を止めて振り返った。

数年振りに見た娘の姿は、幼い顔立ちだった記憶の桜ではなく、亡き妻に似て綺麗な女性へと成長した姿だった。

「それを言うために帰ってきたのか」
「……これから、杏寿郎と任務なんです。その前に何となくですけど、家に寄りたいなぁって思って」

父に何かを言うために帰ってきた訳ではない。本当にただ何となく、だ。

「フンッ、くだらん」

そう言って背を向け、再び酒を買いに向かおうとする。

「……たまには帰って来い。千寿郎も喜ぶ」
「…!」

小さく呟かれた言葉は確かに自分の耳に届いた。そして素直じゃないなぁ、と苦笑する。

「行って参ります、父上」


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