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鬼滅の刃〜炎の絆〜

第1章 家族の絆ー前編ー


勢いよくあの場を飛び出して、気付いたら父の部屋に繋がっている廊下にいた。

…心が折れそうになっている時に、父に会ったところで良いことなどない。引き返そう、そう思い回れ右した時だった。いつもは部屋から出てこない父が、今日に限って部屋から出てきたのだ。

悪い事というのは意外にも重なるものなのだと、改めて思い知った瞬間だった。

「……フン、杏寿郎の言う通り、鬼殺隊などさっさと辞めてしまえ」

いつも部屋に篭っているのに…聞いていたのか、それとも杏寿郎の声が大きくて聞こえていたのか。どちらにしてもこの状況はあまり良くない。

「…鬼殺隊に入って早々に止めるつもりはありません」

言い返せば、父はギロッと桜を睨む。

「お前には素質がない。刀も炎刀にならなかったそうじゃないか」
「それは……。でも、炎の呼吸を極めることはできなかったけれど、光の呼吸を編み出すことができました」

その言葉に槇寿郎の雰囲気が一気に変わる。

「……光の呼吸、だと?」
「炎の呼吸から派生した呼吸です」

「……くだらん。派生させたからなんだと言うのだ。調子に乗るなよ、お前など大した剣士になどなれん。……炎から生まれた呼吸など、意味がない」


ーーーーーーーーーーピシッーーー


調子になど乗っているわけない。炎の呼吸ではダメだったから、自分に合った呼吸を編み出しただけなのだ。

ギュッと握っていた手に力を込める。

出来ることなら炎の呼吸を極めたかった。でもそれは無理だったのだ。悔しいが、どう頑張っても私は杏寿郎のようにはなれない。

「…例え炎の呼吸より弱くても、私には光の呼吸が合っているんです」

「だから私は、私なりのやり方で鬼殺隊を続けていきます」と真剣な表情で伝える。

「……炎の呼吸も、“日の呼吸”から派生した。どの呼吸も、“始まりの呼吸”には敵わない」

父は桜に背を向け、ポツリと呟く。

「俺や杏寿郎も同じだ。どんなに訓練し、炎の呼吸を極めても“日の呼吸”には敵わない。大して強くなれない」

「…………………………」



「鬼殺隊を辞めないなら出て行け。家の敷居を跨ぐことなど許さん」





ーーーーーーーーーーパリンーーー





父の言葉が胸に深く突き刺さる。ヒビの入った家族の絆が割れた瞬間だった。


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