第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
「エニシ!もっとスピード上げろ!」
「わ、かって、る!」
忍組手の手合わせを兄ちゃんにしてもらってるんだけど、すっごい速くて、しかも一つ一つが重いからひやりとする。
一発でも当たったらKO負け間違いなし。
でも兄ちゃんにも癖はあるから、その癖を見抜いて反撃するまでには出来る様になった。
最初は見切ることすら出来なかったから苦労したんだわ。
「よし、ここまで。じゃあ、次はイタチに付き合ってもらえ。」
はあ?連ちゃん?
はあ??
「もう俺だとタイミングとか掴んでるから練習にならないだろ。動体視力を底上げするんだろ?」
「そ、うだけど…。」
遠回しに褒められたのは嬉しいけど、休みたいんだよね。
分かってて言ってるよね?
「待ったなしだ。休んでる暇はないぞ。折角今イタチがいるんだから付き合ってもらえ。」
「サヨウデスカ…。」
鬼の様に効率重視デスネ…。
ま、泣き言言ってられないのも確か。
よっしゃ、切り替えてこう!
「お願いします。」
私が言うと、イタチは不適な笑みを浮かべる。
「手加減はしないで良さそうだな。」
げっ。やな予感…。
怯みそうになる自分を叱咤して構えを取ると、間髪入れずにイタチが蹴りから始め出した。
と思ったら、流れる様に連弾で来た。
ぐっと踏ん張って耐えるも、今度は拳が突き出される。
どれも綺麗な型で且つ動きが滑らか。
「受けるだけじゃ苦しいぞ。」
兄ちゃんの叱咤に応える余裕もなく、動きを追うので精一杯。
でも、リズムは何となく掴めた。