第7章 総長と参謀
「オマエは、稀咲を東卍に入れた方が良いと思うの?」
「芭流覇羅とぶつかるのに、今は純粋に戦力が欲しいから」
アタシはチラッと稀咲に目を向けて、マイキーに視線を戻す。
「今の参番隊は解体して、隊員は他の隊に割り振る。稀咲鉄太を隊長に、元・愛美愛主50人は丸ごと参番隊に入れる」
「……」
「参謀から総長に、そう提案する……責任は、アタシが持つよ」
アタシはマイキーの目を見つめて、答えを待った。
マイキーが嫌と言えば、それはそれで仕方ない……稀咲には諦めて貰って、アタシはまた芭流覇羅と戦う策を考えるだけ。
少しだけ考えるような間があったけど……
「──わかった」
マイキーは、アタシに頷いた。
「!」
アタシの横を抜け稀咲の方に歩いて行き、マイキーは稀咲の前に立つ。
「稀咲鉄太、オマエの条件を飲む」
「!……ありがとうございます!」
ガシッ
マイキーと稀咲が、交渉成立の握手を交わした。
「………」
その様子を、ドラケンは厳しい表情で見つめていた。
ギロッと、副総長の鋭い瞳がアタシに向く。
「何考えてんだ、オマエは……」
「うん……ごめんね、ケン」
敵チームの幹部だった男を、参謀自ら懐に招き入れるようなマネをしたワケだから、副総長が怒るのは当然だった。
「でも、50人って数は、やっぱりデカいよ。一虎の事もあるし……東卍は絶対に、芭流覇羅に勝たなきゃいけないから」
前を見据えて話すアタシを、ドラケンはじっと見つめて……そのうち深く、溜息を吐いた。
「いや、悪ぃ……オマエの負担を考えたら、気に入らねーってだけで反対するワケには行かねーよな」
ドラケンは表情を柔くして、「オマエが決めた事なら」と最後には納得してくれた。
アタシは少しだけ安心して、ドラケンに向かって微笑む。
「ありがとう」
けど……他のみんなは、きっと怒るだろうな。
アタシは拳を握り込んで、そっと目を閉じた。
責められンのは覚悟の上……それを納得させンのが、参謀(アタシ)の仕事。
芭流覇羅に勝つために──!
◇◆◇◆
稀咲との交渉から2日後───武蔵神社
東卍の集会が行われる今日、マイキーは集会より早い時間に隊長達を集めた。