第54章 死にたがりの囁き
昼食の時間。大広間はいつも通り賑やかで、フォークや皿の音、笑い声が入り混じっていた。ミラはその喧騒の中で、ただ黙々とスープを口に運んでいた。周りの楽しげな空気に交じる気もなく、視線は手元のパンに落ちたままだ。
そんな時、パーバティとラベンダーが少し遅れて大広間に入ってきた。またトレローニー先生のところに入り浸っていたのか、二人はそわそわした様子でミラたちのところまでやって来ると、パーバティが口を開いた。
「ねえ、ミラ!“例のイケメンスリザリン生”のこと、占ってあげるわ!」
ラベンダーも目を輝かせながら頷く。近くに座っていた生徒たちもチラチラ見たり、聞き耳を立てているのをハリーたちは見た。
「そうそう!トレローニー先生に特別に教えてもらったのよ。恋の未来を読み解く水晶占い!絶対当たるんだから!」
ハリーとロンが同時に顔を見合わせ、慌てて手を振った。
「ミラ!これなんかどう?」
「そ、そうそう!それよりデザート取ってこようぜ!」
ハーマイオニーも苦い顔をして、そっと二人にジェスチャーを送る。
「(その話題はダメ!)」と唇の動きだけで訴えた。
だが、パーバティとラベンダーはまるで気づかない。
「ねぇ、彼の名前を教えて!なんて言う名前なの?」
「何年生?探してるんだけど、全然見つからないのよね」
「あんなイケメンと知り合えるなんて羨ましいな----もしかして、運命の人だったりして!」
----ガチャンッ!
大広間中に、甲高い音が響いた。
ミラの前で、フォークとナイフがテーブルに叩きつけられ、恐ろしいほど静かに空っぽのお皿に視線を落としていた。
その音に、近くの席の生徒たちが一斉にこちらを振り向く。
ミラは静かに立ち上がり、パーバティとラベンダーを軽蔑するような目で見据えた。