第53章 潜む闇
【ドラコ視点】
午後の授業が終わったあと、スリザリンの談話室へ戻る途中、廊下の曲がり角で足を止めた。数人の女子が、きゃっきゃと笑いながら話していた。声が妙に耳に残る。
「ほんとに、ミラがあんな顔するなんて!まるで幽霊でも見たみたいだったわ」
「うん、でも、私が気になったのはその“ボガート”の方よ」
「ね、あのイケメン!誰だったの?スリザリンの子みたいだったけど……見たことない」
「黒髪で、すっごく整った顔してたわ」
「ねえ、誰かあんな子いた?上級生っぽかったけど」
僕は、何気ないふりをして歩きながら、耳だけそっちに向けていた。
----誰だ、それ。
さらに、ネビルを含めたグリフィンドール生も話しているのが聞こえた。
「ミラ、大丈夫かな…すごく顔色が悪かったけど…」
「ああ、アイツの反応----なんか普通じゃなかったよな。あんなスリザリン生いたか?女子たちはイケメンって言ってるけど、俺は正直怖いと思った…」
眉をひそめる。そんな奴が僕の寮にいたか? 記憶にない。スリザリンの中で目立つ顔ぶれなら、全部知っているつもりだ。
授業の中で、グローヴァーがそんな顔をするほどの相手――いったい誰だ?別に、深く詮索する理由なんてない。
ただ----ほんの少しだけ、気になるだけだ。
この後、グローヴァーと裏庭で会う予定だ。そこでグローヴァーがどんな顔で現れるか確かめればいい。
「お前ら、先行ってろ。僕のカバンも持ってってくれ」
クラッブに僕の鞄を渡し、裏庭へと足を進める。