第10章 【第七講 前半】修学旅行のハプニングはベタ中のベタでよし
修学旅行一日目。初日は奈良。
有名な公園で鹿と戯れ、夕方には宿泊先である京都のホテルに移動した。
夕食を食べ終え、現在、生徒達は自由行動の時間を満喫している。
「ブッ!」
○○は顔面に枕を受け、ブッ! と声を漏らす。
「チッ、また顔か」
枕を放ったのは沖田。
「わざとだよね? わざと顔しか狙ってないよね?」
さっきから、沖田から放たれる枕は全て○○の顔面に集中している。
○○、近藤、沖田、それから数名の風紀委員は枕投げというバトルを行っていた。
あまりにもといえばあまりにもベタな、修学旅行での一幕。
「□□の顔面が枕に突っ込んでんだろ。寝んねの時間はまだ早いぜ」
「私はうつ伏せで寝ないから!」
○○は沖田に思いきり枕を投げるが、彼は難なくキャッチする。
「そんなタマで俺を刺せると思うなよ」
「ブッ!」
またしても、沖田の攻撃は○○の顔面にクリーンヒット。
この枕投げ、顔面はセーフというルールなので、いくら食らっても敗北にはならない。
が、ダメージは大きい。
「オイオイ、総悟。女子の顔面ばかり痛めつけるのは、よくないぞ」
「何言ってんですかィ。戦場に男も女も関係ねーや」
ここは戦場。命がけの戦いの場。
たとえ女が相手でも、たかが枕投げだとしても、情けは無用。
「それに、俺ァドSですぜ。顔面に食らって痛がってんの見んのが、一番おもしれェ」
沖田は口角を上げる。
そうハッキリと宣言されては、近藤に返す言葉はない。
「やっぱり、わざと顔面狙ってるんじゃない!」
○○は沖田に向けて枕を振り上げる。