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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第18章 どうでもミルフィーユ◉相澤消太



「避けちゃってごめんね、怒ってる・・よね」

「ああ、怒ってる」

低く呟くと見開かれた瞳、そんな顔したって許さない、そう言いたいのにうっすらと潤んだそれは簡単に俺の言葉を封じてしまう
色付いた頬と唇に甘く誘われるまま、結局俺は喰むように唇を重ねた


「ふ、ぁ・・っ」

「なんだよその理由」

「すぐそうやって、しないで・・!」

「遠慮する理由がないだろ」

悶々と過ごしたこの一ヶ月は何だったんだ、湧き上がる腹立たしさと安堵に眉根が寄る
目の前には呑気に蕩けた顔、物欲しそうに俺を見つめる彼女の気持ちを確かめたくてまた唇を触れ合わせた


「ちゃんと言えよ」

「ん、はぁ・・っ」

「かも、とか要らない」

甘く啄むとぎゅっと力のこもった小さな手、指を絡めて身体を引き寄せる
本に混じる淡い彼女の香りは陽だまりのように心地がよくて、漸く俺にも訪れた季節に心が満たされていくのを感じた


「ほら早く」

「す・・き」

「足りてない」

「・・相澤くんが、すき、すごく」

言い終わらないうちに俯いたその顔、抱きしめると彼女は恐る恐る俺の背中に腕を回して
俺の方が好き、耳元でそう呟けば彼女はぎゅっとしがみついて赤いその顔を隠した


「シたい事、いっぱいある」

「ひ、え」

「仕返しの日」

「仕返しじゃなくてお返しね・・?」

「どっちでもいい」

塞ぐように唇に吸い付いて、這わせた手が彼女のネクタイを緩める
驚きに身を捩る気配、離すまいと絡めた指先が彼女の頭をくしゃりと押さえて


「、やめ・・っ」

「図書室では静かに」

「お、大声出すよ・・!?」

「お好きに」

後ろ手に握られた分厚い背表紙に視線を落としながら、柔い舌を捕まえる


「それで殴るのか」

「っ、はぁ」

「覚えてて偉いな」

上がる口元を隠すように首筋に唇を寄せれば、息を上げた彼女が思い切り俺の胸を押した



「・・っ、相澤くんのばか!」

「え」

「だから会いたくなかったの!帰る!」

指先に触れていた素肌が離れていく
バッと音を立てて立ち上がった彼女はブラウスを整えると床の鞄を掴んだ


「ちょ、待っ」

「そういう事ばっかり・・!」

「いや、それは」

お前だって、お前が、口を衝いた言葉はどれも遠ざかる背中に届かなくて
心外だと悪態をついて慌てて後を追うと細いその手首を掴んだ
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