• テキストサイズ

《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第17章 この話はもう終わり《後編》◉山田ひざし※



「心配しなくても誰にも言いませんよ」

翌日の職員室、相澤先生が意味深に隣のデスクを見遣って、私は思わず息を呑む


「土曜にわざわざ見張りに来なくても」

「だって今日、出勤なのお二人だけじゃないですか!」

絶対言うでしょう?!、不安で握りしめた手を一瞥すると相澤先生が呆れた溜息を吐いて
断片的な記憶だけでも充分繋がる昨晩の情景が心を落ち着かなくさせた






———


「・・相澤先生のことが好きだったんです・・」

「はぁ」

「でも今はマイク先生のことが・・っ」

相談に乗ってもらっているうちに好きになるなんて、中学生みたいですよね、完全な脈ナシです、相澤先生の話しか共通の話題も無いし、もう私これからどうしたら、



「・・なら、俺と付き合ってみますか」

「何でそうなるんですか、マイク先生じゃなきゃいやです」

高速を走るタクシーの中、ばたばたと足を上下させると肩を震わせて笑う彼が視界に入って
腹が立った私はぺしっとその膝を叩いた


「もう!こんなに悩んでるのに!」

「悪い、ツボに入った」


———




どうか、どうか、同じ光景を思い出していませんように、そう祈るように目線を上げると黒づくめの元想い人はまた静かに肩を震わせている

後悔に打ちひしがれる背後に座席の持ち主が現れた気配がして、私は恐る恐る熱い顔を上げた


「あれェ?随分と仲良くなってンじゃんよ」

オマエも隅に置けねェなァ、そう言って相澤先生の肩を叩いたマイク先生が私にウインクをする


「晴れてオレもお役御免、ってなワケね」

耳元で囁かれた声にズキンと心の奥が痛む
思わず見上げたその顔は、目の下に残る隈がひどいように見えた


「先生、体調悪いですか・・?」

顔色が良くないです、そう言って伸ばした手を彼は自然に払いのけて、大丈夫と繰り返しながらパソコンの電源を付ける

平日とは異なるさらりと下ろされた金色、コスチューム以外の姿を見たのは今日が初めてかもしれない





「俺は昼までに帰るんで」

薬師さんも良ければ此処でどうぞ、そう言った彼は向かいの机を指差した


「暖房代の節約とでも思えばいい」

捕縛布に隠れた口元が意味ありげな笑みを浮かべる
二人の席の前、顔を上げるたび視界に入る彼の姿に胸が騒つくのを決して悟られないようにと私は画面を睨みつけた
/ 160ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp