第15章 お決まりでしょうか◉轟END
しゃがみ込んで彼と目線を合わせると、二色の瞳が困ったように揺れて
目を合わせようとしない彼は駄々っ子のようで、大きな身体を丸めていじける姿にまた胸の音が鳴る
「・・轟くんと居るとね、胸が苦しいの」
一応言うけど病気じゃないよ?、照れ臭くて小さく呟いた声は彼に届いただろうか
「っ、めぐ・・?」
「どきどきして、壊れちゃいそうで、」
ちゃんと受け止められるかも心配、轟くんちょっと重いんだもん、そう言って覗き込んだ目はこれ以上無いくらいに見開かれていた
「まだ好きになったばかりなの、轟くんのこと」
「っ・・!」
「それでも、いい、?」
バッと音を立てて顔を上げた彼が口をぱくぱくさせて、じわりと耳が赤く染まっていく
「私がもう少し轟くんの気持ちに近づくまで、その、なんていうか・・」
「待て、ってことか?」
「・・できればゆっくり、」
「無理だ」
「へ」
言うや否や立ち上がった彼が私の腕を引っ張り上げる
壁に押し付けられた背中がひんやりと冷たい
「と、轟くん・・っ?」
「すげぇ不安だった」
唇を触れ合わせたまま呟かれた言葉が私の耳に届くと、啄むような口付けが降ってくる
酸素を求めて開いた隙間に甘い舌が滑り込んで、熱い身体は溶けてしまいそうになった
「っふぁ、あ、」
「もう待てねぇよ、勘弁してくれ」
荒い呼吸の混じったそれは容赦なく私を狂わせて、大きな手はブラウスの裾から素肌に触れる
弄るその手の余裕の無さに、泣き出しそうなその瞳に、心の奥が掴まれて涙が出そうになった
「んぁ・・っ」
「なぁいいか・・?」
ちらりとベッドを見遣った彼の瞳は全く冗談の色をしていなくて、私は慌てて両手を突き出す
「だ、めに決まってる・・!!!」
不機嫌になっていくその顔に思わず吹き出すと、彼は甘えるようにすりすりと私に身体を預けた
「一緒に、住んでいいか・・?」
「・・っ、もう〜〜〜!」
学生時代より短くなった髪、子犬のように擦り寄るそれをくしゃりと撫でると、蕩けるような甘い微笑みが返ってくる
「、子どもみたいなこと言わないの」
「末っ子なんだ」
早く続きがシてえ、悪戯っ子のように笑った彼が私の手に指を絡める
耳朶に甘く立てられた歯に自分じゃないような声が漏れた
「居てくれよ、朝まで一緒に」