第14章 お決まりでしょうか◉爆豪END
小鳥の鳴く声がする、まだ薄暗い視界にゆっくりと瞬きをして
うっすらとピントが合った途端、真っ直ぐ見つめる赤い瞳に私は小さく叫んだ
「か、つき、・・っ、いつから」
離さないとばかりにしっかりと繋がれた手、彼が甘えるように頬を寄せる
いつから寝顔を見られていたのだろうか、恥ずかしくて顔を伏せると甘い怠さの残る身体が少しだけ痛んだ
「教えねェよ」
目を細めた彼は意地悪に微笑んで、優しく私を引き寄せると口付けの雨を降らせる
「・・今日も平日だもんね」
まだ離れたくないなぁ、そう呟いて起き上がりかけた身体に伸ばされた腕は、有無を言わさぬ力であっという間に私をシーツへと連れ戻した
「・・お前なァ」
「え、私変なこと言った・・?」
「責任とれや」
顔を顰めた彼の目元がじわじわと赤く染まって、言わんとしている言葉を悟った私もきっと同じ色をしているのだろう
くしゃりと髪に差し込まれた指が仕返しのように私の耳を擽った
「自覚しろつっただろが」
「ひゃ・・っ、深い意味はないよ・・!」
「てめ他の奴にも言ってんじゃねェだろなァ!」
言うわけないでしょ・・っ、悪戯な指先が昨晩の熱を容易に思い出させる
咄嗟に隠したはずの疼きを彼が見逃すはずはなくて、ゆっくりとその口角が上がっていった
「責任とってやるよ」
「べ、別に私は・・っ」
「どこがイイか教えてやろうか」
そう言うと彼は胸元に唇を寄せて、熱に揺れる赤い瞳が甘えるように私を見上げる
メディアで目にする凶暴な振る舞いとのあまりの違いに胸の奥がきゅうっと掴まれて
「・・彼女の特権、だね」
「あァ?ったりめェだろ、喜べや」
「うん・・、うれしい」
得意気な表情に思わず笑みを溢すと、彼は幸せそうに微笑んで私の腰に腕を回した
「特権っつーのは、使うためにあンだよ」
ぐっと密着した身体、掠れた声が耳元で響いて恥ずかしさに身を捩ると、大きな手が愛おしそうに私に触れていく
「もう手加減しねェから覚悟しろや」
「で、でも今なら、私が朝ごはん作れるよ?」
「・・・」
「エプロン貸してくれる?」
ちらりと見上げた時計、これは名案だと持ち掛けた駆け引きに、彼は無言でじっとこちらを見つめている
まさかこの後キッチンであんなに声を枯らすことになるなんて、この時の私は知る由もなかった
