第14章 お決まりでしょうか◉爆豪END
「ごめんなさい」
タクシーの中で送信したそれは、未だに既読の文字だけがついている
彼の悲痛な表情を思い出すととめどなく涙が溢れて
それでもこの胸の痛みにお別れする決心をして、私はそっと画面を閉じた
連絡もせずに鳴らしたインターホン、機械越しでも彼が息を呑む気配がする
重い音を立ててドアを開けた爆豪くんは私を見てその目を見開いた
「なッ、お前・・っ、」
「こんな時間にごめんね」
もうすぐ真夜中を指す頃、外には雪がちらついている
寒いからお邪魔してもいい?、私がそう尋ねると彼は数歩後ずさった
「・・なに、しに来とんだ」
「わたしね、」
「、それ以上入ったら喰うぞ」
こないだの事忘れたンか、唯ならぬ剣幕で凄む爆豪くんが私を睨みつけている
おそらく狼狽えているのであろうその姿に、思わず小さく吹き出してしまった
「あ゛?何笑っとんだテメェ!」
「・・・あのね、喰われに・・来たの」
靴を脱いで廊下へと小さな一歩を踏み出す
赤い瞳を見つめて言葉を紡ぐと、口をあんぐり開けた爆豪くんの顔が真っ赤になった
「てめ意味わかっ・・」
「私、好きみたい、爆豪くんのこと」
「っ・・!」
「まだ好きになったばかりだけど、一緒に居させてくれる、・・?」
頬が燃えるように熱い、下を向いたまま彼の服の裾を掴むと強く強く抱き竦められた身体、彼特有の甘い香りを吸い込んで目を閉じた
「・・・撤回したら殺す」
「うん」
「帰れると思うなよ」
「・・っ、手加減、してね?」
「寝言は寝て死ね」
腕を緩めた彼は腰を屈めるとこつんと額を合わせて
何も言わずじっと見つめて数秒、伸ばされた手がぐい、と私の頬を抓った
「泣いたンか」
「・・・轟くんに、酷いことしちゃった」
「そうか」
大きな手がくしゃりと髪に触れると、堰を切ったように溢れ出た涙
噦り上げる私をただぎゅっと抱き締めた彼が静かに髪に口付けを落としていく
「・・なんも考えられなく、してやろうか」
髪を撫でた指が私の背中をなぞると近づいた距離、乾いた唇がそっと頬に触れる
「していいか」
「う、うう、まだ泣きたいぃ・・」
「チッ、んだテメェ」
目を吊り上げた彼は大きな舌打ちをして、ひょいと私を担ぎ上げると寒い廊下を後にした
「後で覚えとけよ、クソが」