第13章 お決まりでしょうか◉共通ルート《後編》
「昨日は、本当にごめんなさい・・っ」
「いいな緑谷は」
毎日めぐに会えるのか、そう呟いた彼はまるで何も無かったかのように微笑んで
「緑谷どころか相澤先生にまで妬きそうだ」
はにかんでそう呟くと、伸ばされたその手が愛おしそうに私の頬を撫でる
「無事で、よかった」
「あのね、私、・・!」
「誰にも、渡したくない」
ひんやりとした彼の指先と対照的に、染まっているであろう私の頬はどんどん熱を帯びて
囚われたように離すことのできない視線が私からいつものように言葉を奪っていく
「今日もすげぇ好きだ、めぐ」
何回言っても足りねえ、自嘲するように笑った轟くんが私の腕を優しく引き寄せた
「困らせたくねぇのに、困らせたくなる」
「あの、轟くん・・っ」
優しくも強引な手付きに見上げれば近づいた二色の前髪、ふわりと揺れたそれが私の額に掛かる
「やっぱり俺、待てねえ」
「・・っ」
ぐっと近づいた気配、鼻先が触れ合うほど近くで見えたのは苦しげに顰められたその眉
熱い視線を自らの唇に感じて、ぎゅっとそれを噛み締める
恐る恐る両手で彼の胸を押せば思ったよりも簡単に遠ざかった身体、轟くんは大きく息を吐いて床にしゃがみ込んだ
「・・そう、だよな」
「あの、わたしね・・っ」
「頼む、言わないでくれ」
まだ聞きたくねぇんだ、絞り出すように発された言葉に胸が苦しい音を立てる
溢れ出る想いのままに滑り落ちた一雫が、まだ新しい白衣の襟に染みを作った
「・・・泣くほど嫌か、そうか」
———- お決まりでしょうか、
ああ思い出した
そうそう、そんな夢だった
分からなかったのに、分かってしまった
あの時も今も、涙が出たのは嫌だったからじゃない
揺れる自分の気持ちが許せなかったからだ
もっと触れたいと、もっと触れてほしいと
いまならきっと伝えられる
私が心に想っているのは、間違いなく——
→ ◉爆豪END (P.115〜)
→ ◉轟END (P.119〜)