第17章 殺したくてたまらないという顔
失礼します、と言ってアリアは立ち上がる。
先に食べ終えた食器を持って、ハンジに背を向けた。
「またね」
「はい」
最後に会釈をして、食器を下げる。そして食堂を後にした。
背中にハンジの視線を感じていた。だが振り返ることはない。背筋を伸ばし、一定のテンポを保ったまま歩く。
カツ、コツ、カツ、コツ、
軽い足音。しかしそこにブレはない。
「アリア」
それを止める声が一つ。
「エルヴィン団長、リヴァイ兵長」
立ち止まったアリアは振り返り、彼らの名を呼んだ。
敬礼をするとエルヴィンは一度頷いて楽にするように言った。
「ちょうどよかった。君にいくつか話したいことがあったんだ」
「はい」
いったいなんだろう。
エルヴィンの表情からではそれが良い話なのか悪い話なのかいまいち区別がつかない。ちらりとリヴァイの方を見ると、彼はいつも通りの仏頂面だった。だが眉間に深いシワはない。つまりそれほど重い話ではないのだろう。
なんとなく自分の額をゴシゴシとこする。
「どうかしたか?」
「いえ、ちょっと」
リヴァイの顔を見ていると自分も険しい顔をしていたような気がした。
シワを伸ばしてから口角を上げた。
「それで、お話とは」
「立ち話もなんだ。ここからだとリヴァイの執務室が近かったかな?」
「あぁ。そうだな」
リヴァイを先頭にして歩き出す。アリアはその後を追う。
* * *
湯気の立つティーカップが目の前に置かれた。
中身は爽やかな香りの紅茶だ。
エルヴィンとリヴァイと向かい合うようにしてソファに腰掛けたアリアは、とりあえずカップに口をつけた。
「話というのは、エレン・イェーガーのことだ」
同じように紅茶を一口飲んだエルヴィンが口を開く。
「申し訳ないがエレンとの面会は、」
「幹部じゃないとできないんですよね。ハンジ分隊長から伺いました」
「あぁ、話が早くて助かるよ」
アリアの返事にエルヴィンはかすかに微笑む。