第70章 七支柱春药 〜弍〜 / 🌫️・💎・🌊・🐍・🍃・🔥・📿
「捕食をするんだろう」
「捕食…」
何やら物騒な言葉が飛び出しているが、義勇のこの捉え方は完全に間違ってはいない。
「宇髄からの文には沢渡が鬼の性質に近くなる術にかかったと書いてあった。時透、宇髄の次は俺が喰われるとな」
「喰われ、る…ですか」
七瀬はううんと小さくうなりながら、額に右手を当て、天井を仰ぎ見る。
鬼と聞いて彼女の頭に思い浮かぶのは竈門炭治郎の妹の禰󠄀豆子と、風柱である不死川実弥の弟の玄弥だ。
禰󠄀豆子は鬼舞辻無惨の血を浴びた為、完全な鬼になっており、玄弥は人間でありながら鬼のような能力を持つ特異体質。
『確かに情交の事を食ったと表現する人もいるみたいだけど、音柱め。楽しんでる…!」
むむむと小さな恨みが心の中で生まれようとする中、ちゃぽんと浴槽の湯が揺れた。気づけば七瀬のすぐ横に義勇の顔がある。
術にかかっているとは言え、彼の表情にさして変化はない。むしろいつも通りだ。しかし、濃紺の瞳は僅かに欲が浮かんでいるのが伝わって来る。
「とみ、おかさ…」
「義勇だ、七瀬」
「え、ちょっと」
瞬間、彼女の唇は義勇の唇と重なった。静かな彼の性質と同様、穏やかな口付けだ。
ちう、ちうと様子を伺うような愛撫だが、七瀬の心と体は少しずつ少しずつ温度が上がっていく。
「どうした、俺を喰うんじゃないのか」
「いや…それはそう言う事じゃ、なく、て」
「何だ」
『どうしよう…兄弟子が男の顔になってる…これはまずい、かも』
七瀬にかかっている血鬼術は、対象の異性を好きになってしまうと途端に効力がなくなる物だ。
端正な顔立ちの義勇の顔に見惚れる事は何回もあった。言葉が少ない彼だが、さりげない優しさを持っている事も知っている。
「とみ…あ、ぎ、義勇…さん?」
「だからどうした」
「……!?」
両頬がそっと包まれ、七瀬の唇は再び義勇の唇によって塞がれた。
今度は柔らかな愛撫が繰り返された後、義勇の舌がそこをじっくりと味わうように辿っていく。
「気持ちいいのか?」
「は、い…」
「そうか」
「ん、う」