第1章 ほんとの気持ち 冨岡義勇
ーーガラガラッ‼︎
「冨岡さん、来るのが少し遅いですよ。あと診察室の戸はもう少し静かに開けて下さいね?」
「すまん」
さっきから俺の心の中がモヤモヤしてスッキリしない。
どうしたらいいか分からないものが態度に出てしまったらしい。
俺とした事が。
「あらあら、眉間に皺まで寄せては男前が台無しですよ?」
「胡蝶に言われても嬉しくない」
「はいはい分かってますよ。冨岡さんは紗夜に言われた方が嬉しいですもんね」
「何故そうなる」
「違うんですか?」
「ちが…わない、かもしれない」
「歯切れが悪いですねぇ。仕方ないから聞いてあげますよ。何かありましたか?」
「言った所でどうにもならん」
「今のままでは任務に支障が出るのでは?」
「精神統一する」
「それでどうにかなれば良いですけどねぇ」
「……」
言葉で胡蝶に勝てるはずもなく、俺はさっきあった事を包み隠す胡蝶に言う羽目になった。
「冨岡さん、ほんとに紗夜が好きなんですねぇ」
全てを話し終え、開口一番に胡蝶はそう言った。
俺の気持ちは伏せて話したつもりなのだが……
俺は胡蝶に隠し事も出来ないらしい。
「まぁ………そうだ」
「冨岡さんが素直だとちょっと怖いですね」
「…胡蝶」
「はいはい、すみません。で、冨岡さんはあの2人が恋仲になると思ってるんですか?」
「仲がとても良さそうに見えた」
「仲が良いからって、それが恋仲に発展するわけではないですよ?」
それは分かっているが…
さっきの2人を見てしまうと、どうしてもそうなるのではと思ってしまうのだ。
「うーん、そうですねぇ…」と何やら考える胡蝶。
「本当に好きな人に告白されたら私なら速攻で頷きますけど、もしかしたら紗夜には他に想う人がいるのかもしれませんね」
更に胡蝶は続ける。
「私は紗夜の気持ちは聞いたことはないので分かりませんが、冨岡さんに稽古を付けてもらう日はあの子とても嬉しそうにしてましたよ?」
そうなのか?
それは初耳だ。