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❁✿✾ 落 花 流 水 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第20章 響箭の軍配 参



(でも、それならどうして戦場におびき出したんだろ。お城とかに直接向かえば、そこまでの事をしなくても良い筈なのに)

凪の内心の疑問を表情から読み取ったのだろう光忠が、まるで補足をするように口を開いた。

「戦場に奴等をおびき出したのは、城下に余計な被害を広げない為だろう。元々この国は豊かではない。そんな国の中心で戦などしてみろ、余計に面倒な事になる」
「そこは普通に町民にまで被害が出て、石高が減るって言えば」
「……何か仰いましたか?家康公」
「別に」

淡々と口を挟んだ家康に対して、眉間の皺をひくりと動かした光忠が目を眇める。ともかく、無益な血を流す事なく目的を達成させるには、何もないこの平原内で事を済ませる他ないという事なのだろう。様々な可能性を考慮し、戦に無関係な人々の生活を壊さないよう配慮した策を立てた光秀を、凪は素直に凄いと思った。出来れば自分も光秀の立てた策の一助になりたい。そう考えた凪は、些か遠慮がちに口を開いた。

「あの、さっき家康が言ってた合図って?」
「その南蛮筒の部隊が出陣して、本隊に合流する中間地点に来た時点で合図を出す。それに合わせて俺と信長様、それから光秀さんの隊が一気に動いて本隊との合流を阻む。その為のものだよ」
「でもそれって、南蛮筒の隊を見張ってないといけないんじゃ?」
「そうだ。だが生憎と何処も人手不足でな。これはおおよその戦況を把握した上で進めるほか…──────」
「……私、やります」

凪の問いかけに答えてくれた家康に重ね、光秀が静かに告げる。思わぬ毒混入事件により、人手が急遽足りなくなった為に、斥候に回す人員が少ない事を耳にした凪が、不意に彼の言葉を遮った。驚いた様子で口を噤んだ光秀を始め、家康と光忠も意味をはかりかねて凪を見つめる。
意を決したかのように一度瞼を閉ざした凪は、逸らす事なく光秀の眸を見やり、強い意思を込めて言った。

「南蛮筒部隊の見張りも合図も、私の【目】を使えばきっと可能です」

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