第8章 大切で残酷な暖かい過去
そんなレティシアの姿を見て3人は泣いた事で手をあげられたのだと容易に想像が出来た。
涙が止まらず慌てているレティシアにエドゥアルが声を掛けようとした瞬間、ふわっとユリスがレティシアの小さな身体を包み込んだ
ユリス
「無理に泣き止もうとしなくて良いから、目は擦るな。泣きたきゃ泣きゃ良いんだよ」
レティシア
「で、も…っ」
ユリス
「大丈夫だっつーの」
ユリスが優しく背中を撫でるとレティシアは小さな手で彼の服を握って溜め込んでいたものを吐き出す様に泣いた。
暫くして泣き疲れたのか規則正しい寝息をたて始める
ルシアン
「寝ちゃったね」
エドゥアル
「…どれだけ溜め込んでたんだろうな」
ユリス
「3歳からずっとだろ。…唇の噛み痕はそういう事じゃねーの」
エドゥアル
「泣かないようにと痛みに耐えるために、って事か」
ルシアン
「けど、ちゃんとユリス優しいんだね」
ユリス
「…何だよそれ」
ルシアン
「いや?何か安心した」
ユリスの腕の中で眠るレティシアが起きない様に声を潜めて3人は話す。
そして、ユリスは内心こっそり思う事があった
ユリス
(いつか…こいつが笑った所を見てみてぇな)
ユリス
「おいおい…またか。お前の母ちゃんも飽きねぇな」
数日経ってもユリスの家にやって来なかったレティシアを、そろそろ3人が心配した頃…少女はまた痣を作ってユリスの家に訪れた
それを見たユリスは、大きく溜息を吐き出してしゃがむとレティシアの瞳を見詰め、魔法で治してやる
レティシア
「ありがとう…」
ユリス
「いーえ。…よし、今日は実践にするか」
レティシア
「じっせん…」
ユリス
「本当にやってみるっつー事だ。分かったか?」
レティシア
「…うん」
少女が頷くのを確認すると2人と1匹は庭へと出た。
ユリスは18歳で自身の一軒家を持っている為、ゼフィランサスの補佐官の収入が良いのが分かる