第8章 大切で残酷な暖かい過去
ルシアンが8歳の時、少し遠くへ行こうとして冒険感覚で歩いていたら迷子になり、どうやって帰ろうか悩んでいた時に5人の男に囲まれてしまった。
その男達も東洋人だからと、思い付きでルシアンを拐おうと計画したのだ。
だが、その計画も突然現れたユリスとエドゥアルによって阻まれルシアンは事なきを得た
ユリスが魔法で助けた事によりルシアンが、魔法は怖いものでは無いのだと理解したのもこの時だった
ルシアン
「母さん、ユリスの所に行ってくる」
母
「夕飯までには戻りなさいよ?」
ルシアン
「分かってるよ」
母
「あ、それから…これ、ユリスさんとエドゥアルさんに渡してちょうだい」
ルシアン
「アップルパイ?」
母
「ええ。うちの可愛い息子と遊んでくれるお礼にね」
その言葉に少しばかり恥ずかしそうにしながらも、渡されたアップルパイを受け取りユリスの家へと向かう
ユリス
「何だ、また来たのか」
ルシアン
「良いだろ、別に」
ユリス
「へいへい、構いませんよ」
面倒そうに返事をしたユリスは尋ねてきたルシアンを家へ通す。
すると、先に来ていたエドゥアルが読んでいた本から顔を上げてルシアンに笑みを向ける
エドゥアル
「ルシアンじゃないか。…ん?それは何だ?」
組んでいた脚を解いたエドゥアルがルシアンの持っているバスケットバッグを指さして問い掛けると、それをテーブルに置いて
ルシアン
「母さんが2人にお礼だって、アップルパイを焼いたんだ」
エドゥアル
「へぇ、アップルパイ…良いね。それよりお礼って?」
ユリス
「んなの決まってるだろ。子守りのお礼」
ルシアン
「間違っちゃないけど…子守りはよしてよ」
エドゥアル
「ユリスはこういう言い方しか出来ないからね、気にするだけ無駄だよ」
ユリス
「エドゥアルめ…」
エドゥアル
「文句は聞き飽きた。勝手に棚を漁るぞ。コーヒー、飲むだろ?」
ユリス
「…飲む」
ルシアン
「あ、俺手伝う」
これが出会ってから続き、必然的に3人で集まる様になった。
ユリスとエドゥアルが仕事の手が空くとルシアンとトランプゲームをしたり、他愛ない会話をしたりと何気ない日常が続く中でも─