第15章 予感と奇跡
「未来クン」氷月が未来に話しかけた。
「石片がまだ沢山付いています。美女が台無しです。顔を洗って来ると良いですよ、そちらの川で」
「え、そーなん?じゃあ…」未来が司の方を見た。
「…確かにいっぱい付いてるね。うん、一緒に行こうか、未来」
三人が川に向かって歩いて行く。
その後ろ姿を遠目に見た葵の顔が青ざめた。直ぐ様一緒にうっかり壊した石像のパズル作業に取り組んでいた杠に指示を出す。
「ごめん、作業抜けるね」
「えっ、どうしたの?」
「千空君に言伝。緊急事態。ヤツが動いた、科学の武器持って急いで来い!私の行った方角も覚えてて」
「うん!わかった…!!」決死の表情で地面に置いた管槍を持って行く葵に、只事では無いと感じた杠も千空を探しに行く。
同時刻。クロムも異変に気付いた。
「ダイナマイトの本数が合わねえ……!」
「……誰かが盗ったなら、僕の耳に聴こえた筈だ。それを掻い潜る様な隠密行動が出来るようなのはーー」
ーー葵の方は違うだろう。彼女は基本他人の為に動く人間だし、根は善性だ。こんな危険な代物を勝手に盗む人間では無い。その辺の分別はある。
だから、もう1人。紅葉ほむらーー
焦る羽京を横目に、悲劇は起きる。
ドォオオオオン!!!!
「この感じは…!!」羽京が叫ぶ。
「奇跡の洞窟だ……!!!」千空が、驚愕した。
青ざめる科学王国の面々の元に、杠がやって来る。
「はぁ、はぁ…!千空君!緊急事態!」
「今のやつか?!」
「ううん、違う…!!葵ちゃんが、『ヤツが動いた、科学の武器を持って急いで来い』って…!!!!」
杠のセリフに青ざめる千空。
「っ……畜生!軍師は何処だ!?」「管槍持って走ってったよ、こっち!」「俺らも追うぞ!!!」
準備をして、急いで千空は仲間達と共に駆ける。
ーー氷月の動きについては予告されてたし、司自身にも言ってた。もう少し監視をーー
いや、『たら』『もし』の話は無駄だ!
「無事で居てくれ……!!!」
千空の声が空に消えた。